e景気回復の実感を家計に
- 2013.06.29
- 情勢/経済
公明新聞:2013年6月29日(土)付
政労使による賃上げ協議の場を
世帯収入の増加
自公連立政権の経済再生策が、景気を着実に回復させている。内閣府が、5月の景気ウォッチャー調査の結果を「景気は持ち直している」と評価した点は、日本経済全体に対する一つの見方だ。
ただ、多くの人は「景気回復は、まだ実感できない」のが本音だろう。民間企業の平均給与は、1997年の467万円をピークに下落。2011年には409万円と10年前と比べて10%も減少した。国内総生産(GDP)の6割前後を占める家計の消費支出が増えなければ、本格的な景気回復とはいえない。
家計と企業は、経済を動かす二枚看板だ。企業の経営心理は、歴史的円高やデフレで萎縮したが、金融緩和と財政政策の効果で攻めの経営姿勢に転じる動きも出始めた。
問題は、企業利益が賃上げなどの形で家計に還流するかどうかだ。
民間企業は賃金を抑制したいに違いない。景気が回復しているといっても、利益は伸び始めたばかり。経営者としては、賃上げは容易に決断しにくい。デフレ経済下で経営コストを極限まで抑え、耐え抜いてきた苦い記憶もある。
厳しい景気低迷期を乗り越えてきたのは従業員も変わらない。必ず経営が好転し、やがて賃金も上昇すると予想したから歯を食いしばって来れたはずだ。利益が増え始めたのであれば、下がり続けた給与のアップを願うのは当然である。
そこで重要なのが、政府(政)、労働者(労)、使用者(使)の3者が、賃上げに向け、建設的意見を述べ合う新たな協議の場の設置だ。
政労使による協議の場は、厚生労働省内に労働政策審議会として存在する。しかし、若年世代の非正規雇用の増加など、多様化した現在の働き方の実態が労働政策に適切に反映されているか、疑問視する向きもある。
成長戦略に明記されたように政労使協議の場の設置は、労使が「虚心坦懐に意見を述べ合う」機会にすべきだ。
日本と状況は異なるが、1980年代前半に経済不況に直面したオランダでは、政労使の協力(ワッセナー合意)で雇用危機を乗り越えた。当時の議論は、政労使がどのように話し合うべきかの参考になるかもしれない。
政府は労使双方が、企業経営に無理のない範囲で、適切な賃金水準の確保を合意できる環境を整備してほしい。
世帯収入の増加など目に見える果実を家計にもたらす視点で協議が進むことを期待する。