e核問題交渉の進展を期待
- 2013.06.30
- 情勢/国際
公明新聞:2013年6月19日(水)付
国際社会は対話への環境整えよ
イラン次期大統領
イラン国民は大きな転換を望んだといえよう。
核開発問題で国際的な孤立を深めているイランで行われた大統領選で、保守穏健派のロウハニ師が保守強硬派の候補に圧勝した。ロウハニ師は17日、「核開発計画に関して透明性を高める」と表明し、欧米との関係修復に意欲を示した。
ロウハニ師が、欧米と対決姿勢を取ってきたアハマディネジャド現大統領の路線と決別する宣言をしたことは歓迎したい。緊張緩和への糸口となるよう国際社会も努力しなければならない。
8年間続いたアハマディネジャド政権は、イスラエルに対する強硬発言や改革派の弾圧を繰り返し、国際社会は不信感を募らせている。核開発継続を理由に欧米諸国が経済・金融制裁を科したため、イラン国内では物価の高騰や失業率の悪化で閉塞感が漂っている。
ロウハニ師は、ハタミ前政権が欧州諸国とウラン濃縮活動停止に合意した際、核交渉の責任者を務めた経験があり、国際協調を重視する立場だ。選挙戦で現政権を厳しく批判し、経済立て直しのために欧米との関係改善を訴えたことが、改革派などの支持を集め、勝因となった。
早速、米国は核開発問題の解決に向け、直接交渉の用意があることを明らかにした。
ただし、次期政権が融和に踏み出すか、出方を慎重に見極めなければならない。ロウハニ師は「ウラン濃縮を停止するつもりはない」として、核開発を継続する立場を明示した。
しかも、核開発などの重要政策の最終的な決定権を持つのは、最高指導者の地位を20年以上も務めるハメネイ師である。大統領の裁量は限られている。
イランは兵器への転用が容易になる濃縮度20%のウランを保有し、原爆に使用できる90%濃縮も現実味を帯びていると指摘されている。イランの核開発が続く限り、イスラエルは核施設への単独攻撃も辞さない構えだ。
中東地域の不安定化は、原油輸入の大半を依存する日本をはじめ、世界経済に大きな影響を与える。
国際社会は対話の環境を早急に整えてほしい。
核開発問題の交渉進展は、同じく国際的な孤立を深める北朝鮮問題の解決や世界の核管理の前進が期待できる。
日本は、イランと長年にわたって独自の友好関係を築いてきた。政府も、米国などと協調し、イランへの積極的な働き掛けを行っていくべきである。