eiPS細胞の臨床研究
- 2013.07.29
- 情勢/社会
公明新聞:2013年7月29日(月)付
世界初となる再生医療の取り組みは?
がん化や免疫による拒絶反応などの安全性を確かめ、再生医療における患者の命救う大きな一歩に
Q iPS細胞(人工多能性幹細胞)による臨床研究の現状は?
今月19日、iPS細胞を使う臨床研究の実施計画が、厚生労働相から正式に承認されました。これによって、難病治療への世界初の臨床研究が来年夏にも始まります。
この研究は理化学研究所「発生・再生科学総合研究センター」(神戸市)の高橋政代プロジェクトリーダーらが計画したもので、移植した細胞の安全性を確認します。
Q 研究の内容は?
目の難病「加齢黄斑変性」が臨床研究の対象です。網膜に無数の血管ができる「滲出型」の患者にiPS細胞から作った細胞を移植します。国内の患者数は約70万人。根本的な治療法がなく、悪化すると失明します。
計画では患者自身の皮膚などからiPS細胞を作製。これをシート状の網膜細胞に成長させ、傷んだ部分に移植します。移植後1年間は1~2カ月に1度の頻度でがん化や免疫による拒絶反応がないかを検査し、その後も3年間、経過を観察します。全国の病院で治療を受けられるようになるには、10年ほどかかる見通しです。
Q 目以外の臓器などへの応用は?
iPS細胞はさまざまな臓器への臨床応用をめざす研究が進んでいます。例えば、脊髄損傷の治療を5年以内、重症心不全を治療する心筋(心臓の筋肉)細胞の臨床研究を3~5年で開始すると文部科学省が工程表を公表しました。
しかし、日本の再生医療の現状は研究や技術開発が進む一方、既存の法律や制度が対応できていないため、制度面の環境整備を急がなければなりません。
Q 公明党の取り組みは?
公明党が主導した再生医療推進法が4月に成立した意義は大きいと言えます。公明党案をもとに、自民、公明、民主3党でまとめ、再生医療を迅速かつ安全に推進するための法律です。
iPS細胞は移植後に、がん化する可能性が指摘されています。こうしたリスク(危険性)や副作用への対応が重要です。
今後、審査手続きを簡素化する薬事法改正案や患者から採取した細胞加工の外部委託を認める新法成立など、再生医療の実用化に道を開く支援に全力を尽くす方針です。