e食物アレルギーと給食 再発防止の具体策進めよ
- 2013.08.01
- 生活/生活情報
公明新聞:2013年8月1日(木)付
学校と自治体の連携強化が重要
食物アレルギーのある児童・生徒が、安心して学校給食を利用するために何が必要か。昨年12月、東京都調布市で発生した女児死亡事故を踏まえ、食物アレルギー対策を検討している文部科学省の有識者会議が今週、中間報告をまとめた。
中間報告は、具体的な取り組みとして、取り除くべき食材の種類などを示した政府の「ガイドライン」を学校現場で十分に活用できるよう周知徹底を促している。ガイドラインを基に、各学校で緊急事態が起きた場合の対応と役割を決めたマニュアル作りも求めている。
学校給食を提供する事前の対応として、かかりつけ医と学校医、学校、保護者が連携して管理指導表を作成するよう要望。また、学校全体で食物アレルギーの理解を深めてもらうため、校長など管理職も含めた全教職員を対象に、専門家による研修や訓練の実施を提言している。
このうち、研修については、食物アレルギーの重篤な症状であるアナフィラキシーショックが出た場合、症状を緩和する自己注射薬「エピペン」を適切に使えるよう、日頃から医師などと連携して訓練を行うことを提示している。
万が一、児童にショックが出た場合、その後の対応が何より重要だ。エピペンで生死が分かれる場面もある。一刻を争う時は、ショックの出た子どもに代わって教師が打つこともできる。
しかし、調布市の事故では、食物アレルギーに対する教職員の理解が十分でなかったと指摘されている。教職員が、とっさの機転を要求される場合も想定されるため、学校と消防との緊急時に備えた連携なども検討すべきだろう。
報告では、緊急の対応を現場の教職員だけに求めるのではなく、市区町村教育委員会や校長が危機管理意識を持って対応することが重要だと強調している。その通りだ。命に関わる問題であるだけに、自治体は危機感を強めて取り組むべきである。
全国の公立小・中学校と高校での食物アレルギーのある児童・生徒数などについて、文部科学省の調査は9年前に行っただけだ。今後、9年ぶりに食物アレルギーのある児童・生徒数やガイドラインの使用状況などの調査を行うが、これは遅すぎる対応である。
有識者会議は、来年3月をめどに最終報告をまとめる方針だ。しかし、学校現場は新学期から防止策が実施できるよう即刻、自主的な取り組みを進めてほしい。