e仕事と育児の両立に効果

  • 2013.08.03
  • 生活/生活情報

公明新聞:2013年8月3日(土)付



国助成の1割が休廃止に 共同運営など工夫が必要

企業内保育所

企業が従業員の子どもを預かるため社内に設ける「企業内保育所」の課題があらためて浮かび上がっている。

2011年度までに国の助成金を受け、設置された企業内保育所720施設のうち、1割強に当たる81施設が休廃止していたことが、会計検査院の調査で判明した。休廃止の主な理由には「乳幼児数が確保できなかった」「事業主の経営状態や業績が悪化した」が挙げられている。

会計検査院は厚生労働省に対して設置計画の審査の甘さを指摘しており、改善されなければならないのは当然だ。その上で、企業内保育所の運営の難しさを端的に示した事例ともいえるだろう。

企業内保育所は、母親が勤務時間に合わせて子どもを預けられるなどの利便性が高く、仕事と育児を両立する有効な選択肢の一つだ。厚労省の調査によれば、企業内保育所は全国で12年3月現在で1610施設あり、女性社員の人材確保や離職防止に大きな効果を発揮している。

しかし、企業内保育所は地域の保育所と比べて、利用者が少なく、安定しない傾向にある。しかも多額の運営費用が掛かり、国の助成を受けた場合でも厳しい経営を迫られる施設が多い。そのため、特に中小企業では導入が進んでいない。

多様な保育環境を整備するためにも、企業内保育所の普及へ創意工夫を求めたい。

例えば、複数の企業が保育所を共同運営することで費用を分担し、負担軽減につなげることも一案だ。

中小企業も共同運営によって企業内保育所を設けられたケースがある。さらに埼玉県では、県も加わって地元企業3社と共同運営する企業内保育所を今年4月にオープンさせた。こうした試みが各地に広がることを期待したい。

また、待機児童の増加が社会問題化する半面、企業内保育所の定員には空きが多いという"ミスマッチ"の問題にも対応する必要がある。

東京都豊島区では、区が仲介役となって定員に余裕のある企業内保育所に、区内の待機児童を受け入れてもらう取り組みを5日からスタートさせる。地域への開放を推進し、待機児童の解消につなげてほしい。

一方、政府の成長戦略にも待機児童の解消策の一環として、企業内保育所の助成要件の緩和が盛り込まれた。

企業内保育所の安定的な運営を確保すると同時に、保育の質や安全性も維持しながら、どのような緩和ができるか論議を深めてもらいたい。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ