e鳥獣被害対策
- 2013.08.04
- 情勢/社会
公明新聞:2013年8月4日(日)付
地域社会の存亡に関わる大問題
答える人
公明党野生動物被害対策プロジェクトチーム事務局長(参院議員)
横山信一さん
農業や漁業でイノシシやシカ、トドなど野生動物による被害が深刻化しています。公明党は、「野生動物被害対策プロジェクトチーム(PT)」を中心に、この問題に取り組んできました。同PT事務局長の横山信一参院議員に、これまでの経緯や今後の対策について聞きました。
野生鳥獣による被害が深刻
女性 野生鳥獣に農作物が食い荒らされる鳥獣被害が深刻ですね。
横山 被害額は2009年度以降、年間約200億円を突破しています【イラスト参照】。イノシシ、シカ、サルによる被害が全体の7割を占め、被害作物は果樹や根菜類、稲や麦など全般にわたります。特に、中山間地域などでは集落の存亡に関わる切実な問題になっています。
男性 何が原因なの?
横山 まず野生鳥獣を捕獲する猟友会などのハンターが高齢化し、数も減っています。さらに農村の過疎化や人口減少で里山の管理が不十分になり、耕作放棄地の拡大、暖冬傾向などによって野生鳥獣の生息適地が拡大していることが原因になっています。
当然、駆除する人間が減れば野生鳥獣が増え、作物への被害は拡大します。被害が出れば営農意欲が減少し、耕作放棄地が増えます。そして、耕作放棄地は野生鳥獣のすみかとなり、被害がますます増えていくという悪循環に陥ります。地域社会に与える打撃は、計り知れません。
中山間地域では、耕作面積そのものが小さく、壊滅的な被害を受けてしまいます。
男性 北海道では、トドやアザラシなど海獣による漁業被害も発生しているそうですが......。
横山 そうなんです。北海道では、定置網や刺し網にかかった魚などがトドやアザラシに食い荒らされる漁業被害が発生しており、漁業者からは悲鳴が上がっています。特に、トドは身体が大きいので、漁網が簡単に破られてしまいます。食べる量も多く、被害は深刻です。ちなみに北海道内の被害額は、トドが15億円、アザラシは3億円に上っています(11年度)。
男性 公明党はこの問題に積極的に取り組んでいますね。
横山 はい。党内にPTを設置し、現地調査などを行うとともに、鳥獣被害防止特措法の改正(12年3月成立)を推進しました。改正法の目玉は、「鳥獣被害対策実施隊」への重点的支援です。実施隊は捕獲活動などを担う組織で、市町村単位で設置できることになっています。今回の改正で、一定要件を満たす隊員については、銃刀法の猟銃所持許可更新の際、技能講習が免除され、担い手確保につながると期待されています。
ほかにも、有害鳥獣を捕獲した場合、国が捕獲経費を負担します。イノシシやシカ、サルなどは1頭当たり8000円が上限です。
また、海獣被害対策では、トドの捕獲頭数見直しを訴えました。実はトドは、国際的にはカナダなど保護している国もあります。そのため、日本は、14年度までは年間257頭の捕獲枠で対応することになっています。
また今年度から、国が一斉駆除費用を負担するようになりました。トドは頭の良い動物です。漁期前に一斉駆除すると、その地域に近寄らなくなる習性があります。これまでは、北海道の離島地域だけは駆除費用を国が負担していましたが、道全域も国が負担することになりました。
農漁業を守るため支援強化に全力
女性 農漁業を守るため、一層の支援が必要ですね!
横山 公明党は今回の参院選重点政策の中にも、対策強化を盛り込みました。実施隊を設置している市町村は、まだまだ少ないのが現状です。被害を受けている全市町村が実施隊を設置できるよう後押しします。また、捕獲した有害鳥獣を「ジビエ」(狩猟で捕獲した鳥獣肉)として市場流通させるよう、食肉処理施設の増設も推進します。
鳥獣被害対策は、農漁村の暮らしを維持する上で重要な課題です。農漁村を守るためにも、支援策の強化に取り組みます。