e社会保障全世代で支え合う
- 2013.08.08
- 情勢/社会
公明新聞:2013年8月8日(木)付
石井啓一政調会長に聞く
国民会議が報告書で改革案
政府の社会保障制度改革国民会議は6日、安倍晋三首相に「全世代型の社会保障」などを打ち出した報告書を提出した。国民会議が示した改革の方向性などについて、公明党の石井啓一政務調査会長に聞いた。
社会構造の変化に対応
持続可能な制度に転換促す
―国民会議の報告書の評価は。
石井政調会長 社会保障制度改革の方向性として、非常に重要な点が提示されていると思います。一つは今の制度が出来上がった1970年代の社会保障のモデルから、団塊の世代が75歳以上となり、日本の高齢化のピークを迎える2025年を見据えた「21世紀日本モデル」にしていくという点です。
また報告書では、人口減少や非正規労働者の増加、少子化の進展など、70年代にはなかった課題に対応するためには、高齢者中心の社会保障から、現役世代を含めた「全世代型の社会保障」への転換が必要だと述べています。こうした方向性はおおむね妥当であり、評価できると思います。
―保険料負担の在り方については、これまでの「年齢別」から「負担能力別」に改めるよう求めています。
石井 社会構造や人口構造が急激に変化する中で、社会保障の給付対象は高齢者だけではなく、あらゆる世代に広げる必要があります。一方で制度を支える世代は減っており、これらを踏まえると、現役世代にだけ過重な負担を強いるのではなく、高齢世代であっても負担能力のある人には負担をお願いし、制度を支える側を増やさなければなりません。社会保障制度の破綻は国民にとって大きな不幸であり、制度の持続可能性を担保するためには、やむを得ない提案だと思います。
―一体改革で残された医療・介護の改革案も示されました。
石井 入院期間をなるべく短くし、住み慣れた地域で医療と介護、生活支援をセットで提供することを打ち出しました。そこに消費税の財源を投入していくということなので、公明党が主張する「地域包括ケアシステムの構築」に近いといえます。
また、公明党が見直しを求めてきた高額療養費制度についても、低所得者の負担軽減へ所得区分を細分化すべきだとしています。ただ、70歳から74歳の医療費窓口負担については、現在は特例で1割に据え置いているものを本来の2割に引き上げるよう求めています。公明党は窓口負担を2割に戻すならば、高額療養費制度の見直しもセットで行うべきだと主張しています。
―民主党は国民会議と並行して行っていた自民、公明両党との社会保障に関する実務者協議からの離脱を宣言しました。
石井 もともと社会保障と税の一体改革は、民主党が与党として自民、公明両党に呼び掛けてきたテーマです。また、3党協議は社会保障を政争の具にしないために設置された枠組みだったはずなのに、民主党は自らが主張する最低保障年金の創設や後期高齢者医療制度の廃止が受け入れられないから離脱するという。まったく「大人げない」(6日付 毎日新聞)対応です。
具体化には国民の理解得る丁寧な議論が必要
―制度改革の今後のスケジュールは。
石井 国民会議設置の根拠となった社会保障制度改革推進法では、8月21日までに政府は報告書を受けて法的措置を講じることになっています。この報告書を踏まえ、各テーマについてどのような方向性で、いつまでに法案を国会に提出するかという「プログラム法案」の骨子を21日に閣議決定する予定です。
プログラム法案は秋の臨時国会で提出される見通しで、それに基づいて厚生労働省の審議会などで議論が行われ、具体的な改革の姿が明らかになっていきます。
―公明党はどう対応しますか。
石井 今回の報告書は、有識者が「あるべき論」を述べたという性質なので、直接の利害関係者との調整はできていません。個別の負担増の問題など、厳しい内容も含まれているので、公明党として政府の検討状況をよく見ながら、意見を述べていきます。また、国民の理解が重要なので、丁寧な議論、説明を求めていきたいと思います。
社会保障制度改革国民会議
社会保障と税の一体改革に関する自民、公明、民主3党の合意に基づき、政府が設置した組織で、学識経験者ら15人で構成。2012年11月に初会合を開催し、医療、介護、年金、少子化対策の4分野について議論してきた。