e国民会議報告書のポイント<上>
- 2013.08.15
- 情勢/解説
公明新聞:2013年8月15日(木)付
21世紀の社会保障へ
政府の社会保障制度改革国民会議が今月まとめた報告書は、「全世代型の社会保障」を打ち出すとともに、医療や介護、年金、少子化対策の各分野でさまざまな改革案を示しています。2回に分けポイントを解説します。
全体像
全世代で支え合う社会に
報告書では、社会保障制度改革の方向性として、現行制度が出来上がった「1970年代モデル」から、団塊の世代が75歳以上となり、日本が高齢化のピークを迎える2025年を見据えた「21世紀日本モデル」への再構築を求めています。
他国に例を見ない少子高齢化の進展、家族や地域が支え合う力の低下、非正規労働者の増加など、70年代と比べ社会経済構造は大きく変化しています。報告書では、これらの課題に対応するには、従来の高齢者への支援を中心とした社会保障から、全世代を支援対象とし、「すべての世代が、その能力に応じて支え合う全世代型の社会保障」の実現が必要だと訴えています。
また、負担の在り方についても、世代間の公平だけでなく、世代内の公平の観点から、「年齢別」から「負担能力別」に切り替えるよう提言。高齢者については、保険料や利用料負担などにおいて一律に配慮するのではなく、「負担能力に応じて社会保障財源に貢献してもらうことが必要だ」と述べています。
医療
高額療養費 所得区分細かく
医療分野では、患者負担の在り方も含め、さまざまな改革案が並びました。
高額な医療費の自己負担額に上限を設ける高額療養費制度について、報告書では「一般所得者の所得区分の年収の幅が大きい」と指摘。中低所得者の負担が相対的に重くなっていることから、公明党の主張と同様に、同制度の所得区分を細分化することを提案しています。
一方で、特例的に1割負担となっている70~74歳の医療費の自己負担については、「世代間の公平を図る観点から」、段階的に法律通りの2割負担に戻すべきだとしています。
また、難病対策では「難病で苦しんでいる人々が将来に『希望』を持って生きられるよう」、医療費助成は将来にわたって持続可能で公平、安定的な制度として位置付けるとともに、対象疾患の拡大などを提示しました。
このほか、限りある医療設備や人材を効率的に活用するためには、大病院の外来は紹介患者を中心とし、一般的な外来受診は「かかりつけ医」に相談することを基本とする考え方の普及・定着を求めています。
介護
地域包括ケアの整備推進
介護分野について報告書では、老後も地域で安心して暮らし続けるためには、住まいや医療、介護、生活支援などを一体的に提供する「地域包括ケアシステム」の整備が最大の課題としています。
具体的には、24時間の定期巡回・随時対応サービスや小規模多機能型居宅介護の普及をはじめ、認知症高齢者への初期段階からの診断・対応、生活支援サービスの充実が求められています。
そこで、利用者が予想を上回るペースで増え続ける介護保険制度について、財政を圧迫する問題への対応を2点、提案しています。
一つは「要支援」と認定された軽度の要介護者(約140万人)向けサービスの見直しです。サービス内容は掃除や買い物などの支援が多いため、地元のボランティアやNPO法人(特定非営利活動法人)などを活用し、介護保険から市町村の事業に移す案です。
もう一つは、一定以上の所得がある利用者には介護保険の負担割合の引き上げを提案しています。一方、低所得者については負担能力に応じ、保険料の軽減措置の拡充を求めています。