e公会計制度改革

  • 2013.08.17
  • 情勢/社会

公明新聞:2013年8月17日(土)付



地域目線で「見える化」を
行財政に対する信頼感を高めよ



国の借金(債務残高)が、ついに1000兆円の大台を突破した。税収は1990年を境に減少する一方、社会保障関係費を補う赤字国債(特例公債)発行額が増加。国家財政は、負債が資産を上回る債務超過の状態だ。

過疎化と人口減少が進む自治体への悪影響は、さらに深刻である。政府の成長戦略で本格的に景気を浮揚させ、税収を増やさなければならない。同時に必要なのが、財政の実態を明らかにする「見える化」である。具体的には、単式簿記から複式簿記へと移行する公会計制度改革が必要だ。経済成長を実現して税収を確保しても、血税が適切に使われなければ意味がない。

焦点は自治体での公会計制度改革が、どれだけ進むかだ。東京都は、この制度改革に取り組み成功した。公明党の後押しで、国や全国の自治体に先駆けて複式簿記・発生主義会計を採用。民間企業の方式に近く、収入や支出の増減の要因が記録できるものだ。制度導入で、多摩ニュータウン事業の2272億円の累積欠損など総額1兆円もの「隠れ借金」が顕在化。同事業の遊休地活用などで、2007年度末には隠れ借金を解消し、税収減に備えた基金を1兆円にまで積み増すことができた。

都の取り組みは全国に広がりつつあり、東京都町田市や大阪府でも導入されている。

ただ、腰が重い自治体も少なくない。公会計制度の重要性に対する認識不足から、橋や病院などの固定資産の台帳整備が不十分な自治体も目に付く。地域住民の貴重な資産が有効活用されていない。

制度改革に及び腰な自治体が、理由の一つに挙げるのは、従来方式から新方式への切り替えの手間だ。しかし、財政運営の透明化は、スムーズな財政運営に不可欠な納税者の信頼感を生む。公会計の専門知識を持った人材を配置するなどの支援も必要だろう。こうした視点で「見える化」を進めることが、地域住民の目線に沿った自治体経営の在り方ではないだろうか。

公会計制度は、税金が何にどの程度使われているかを明示でき、ムダな支出を見つけやすくなる。チェックが厳しくなれば、行政側のコスト意識を変えることも可能だ。

より重要な点は、公会計制度改革によって、財政運営に対する地域住民の信頼感を高められる点である。厳しい財政状況が続く中で、適切な予算配分を行うには住民の理解が不可欠だ。魅力的な地域社会を創出するためにも、行政の努力に期待したい。

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