e国民会議報告書のポイント<下>
- 2013.08.17
- 情勢/社会
公明新聞:2013年8月17日(土)付
21世紀の社会保障へ
年金
給付調整 デフレ下も検討
年金制度では、2004年に公明党が主導して実現した現行制度について「基本的に年金財政の長期的な持続可能性は確保されていく仕組み」と評価しました。そして当面は、低所得者対策や保険料の徴収強化などの課題解決に取り組むべきだと指摘しています。
例えば、平均寿命の延びなどに応じて年金の給付水準を抑える「マクロ経済スライド」は、物価が下がるデフレ下では実施されないため04年の導入後は一度も発動されていません。
そこで、給付水準の調整を計画的に進めるため、デフレ下でも実施されるよう検討が必要だとしています。
低所得者対策では、パートなど非正規労働者の増加を受けて、厚生年金などの被用者保険の適用範囲拡大がさらに必要だと強調。
注目された支給開始年齢の引き上げについては、厚生年金が65歳に引き上げている最中のため、「直ちに具体的な見直しを行う環境にはないことから、中長期的課題として考える必要がある」との記載にとどめました。
高所得者への年金給付は、公的年金等控除などを見直して応分の負担を求めています。
少子化対策
学童保育、育休取得を支援
少子化対策の分野では、昨年決まった「子ども・子育て支援新制度」の着実な実施を求めるとともに、それに基づく拡充策を打ち出しています。まず、子育て環境整備では、子どもたちに質の高い幼児教育と保育を同時に提供でき、子育て世代の多様な働き方にも対応できる「認定こども園」の普及推進が必要だとしています。
また、仕事と子育ての両立を支援するため新制度のスタートを待たずに、保育所の定員枠拡大などにより待機児童の解消をさらに加速させることや、受け皿不足が深刻な放課後児童対策に取り組むよう提案しています。
現在、放課後児童クラブ(学童保育)は全国に約2万1000カ所ありますが、さらなる施設整備、指導員の育成、公的支援が求められています。
一方、育児休業を取得しやすくするため、企業の環境整備や育休中の経済支援強化を訴えています。育休給付の引き上げなどは、取得率が低い男性の育休取得の追い風となると期待されます。このほか、妊娠期を含め子育てを総合的に支援する拠点の設置・活用も盛り込まれました。
今後の動き
秋にプログラム法案提出
国民会議設置の根拠となった社会保障制度改革推進法では、政府に対し、8月21日までに報告書を踏まえた法制上の措置を講じるよう定めています。
そこで政府は、社会保障の各分野における改革の方向性や実施時期を記した「プログラム法案」の骨子を21日に閣議決定し、秋の臨時国会に法案を提出する予定です。その後は、主に厚生労働省の審議会で具体的な改革の姿について検討した上で、個別の改革関連法案を順次、国会に提出することになります。
ただ、今回の報告書は、有識者が社会保障の「あるべき論」を述べたものであり、医療機関や保険者といった直接の利害関係者との調整はできていません。報告書には負担増などの厳しい内容も含まれており、改革の具体化に際しては、国民の十分な理解を得ていくことが必要です。このため公明党は、政府の検討状況をよく見ながら意見を述べていくとともに、丁寧な議論や説明を求めていきます。