eデイジー教科書の普及

  • 2013.08.19
  • 情勢/社会
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公明新聞:2013年8月19日(月)付



"読む"喜び分かち合いたい
障がい児の母の声受け止め 一つ一つ課題を克服
一人に寄り添う 公明党の取り組み

 

「いいものが見つかりました!」。2008年冬、兵庫県西宮市の野草美千代さんは、知的障がいのある小学2年の娘・真菜ちゃんのことなどを普段から相談している公明党市議(当時)の田村博美さんに弾む声で語った。見つけたのは、デジタル化した教科書の内容を"読み"が苦手な児童・生徒向けにパソコンなどで再生する「デイジー教科書」。障がい児を持つ友人が教えてくれた。

試しに真菜ちゃんと一緒に使ってみた。すると、パソコン上で文章と読み上げ音声が同時に再生された。読み上げられる部分は強調して表示される。真菜ちゃんはそれを楽しそうに目で追いながら、音読しようとしていた。「これを使えば真菜も一人で"読み"ができるようになるかもしれない」。この光景を目の当たりにした野草さんは、手応えを感じ、「この教科書を学校でも活用して、他の子どもたちと"読む"喜びを分かち合いたい」と決意した。

野草さんと田村さんの"二人三脚"の取り組みが始まった。09年5月に専門家を招き講演会を開く一方、田村さんは7月の市議会で、学校教育で活用するよう提案。その結果、市教育委員会が活用に向けて検討を開始した。

利用者は当初の10倍超に


動きが本格化する中で、普及を阻む課題も浮き彫りになった。同教科書は、日本障害者リハビリテーション協会(リハ協)を通じてCD―ROMの形で提供されるため、入手には費用と手間がかかる。その上、文部科学省の通達で提供先が児童・生徒本人に限定されており、教師が研究用であっても入手できなかった。そこで、田村さんは同年9月、山本香苗参院議員を市教委の担当者に引き合わせた。

担当者の話を聞いた山本さんは、課題解決への決意を固めた。09年12月に質問主意書で普及の必要性を訴え、国会質問などを通じて改善を求めた。文科省では当初、著作権法との関係もあり消極的な姿勢も見られたが、粘り強い折衝の結果、10年5月、従来の方針を転換し、教員らへの配布を容認。8月にはインターネットを通じて同教科書のデータ配信を認めた。それ以来、リハ協が無償でネット配信している。

これらの動きに呼応して、公明党の全国の地方議員が各議会で学校現場などでの同教科書の活用を主張。普及促進を国に求める意見書を採択した議会は70を超えた。

こうした地道な取り組みにより、利用者は、提供が始まった08年度の10倍を超える約1000人にまで広がった。リハ協の野村美佐子情報センター長は「公明党の取り組みを受け、文科省のデイジー教科書への理解が深まってきた」と語る。

しかし、課題は残る。利用者が増えたとはいえ認知度はまだまだ低い。製作もボランティアが頼りだ。そこで、山本さんは今年6月、NPO法人NaDの濱田滋子代表ら製作関係者とともに下村博文文科相と面会。文科相は普及へ「今までと違う次元で力を入れる」と約束した。濱田代表は「公明党は私たちのような"小さな声"にも敏感に反応してくれている」と信頼を寄せる。

野草さん親子がデイジー教科書と出会って約5年。田村さんはこの夏、野草さんと中学1年になった真菜ちゃんと再会、野草さんの友人も交え懇談した。

席上、野草さんが「中学の授業に少しでも参加できるよう、夏休みは真菜と一緒にデイジーで復習と予習に挑戦するわ」と語ると、友人は「うちの子もデイジーを使ってる。今はネットで手に入るから便利やわ」と応じた。それを聞いた野草さんと田村さんは、二人で挑戦を始めたあの当時を振り返り、うれしそうに笑った。

常に「現場第一」を貫き、一人に寄り添う中で、課題解決に向けて政治を大きく動かしてきた公明党の取り組みを紹介します。

(この企画は随時、掲載します)

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