e改正動物愛護管理法が9月施行
- 2013.08.26
- 情勢/社会
公明新聞:2013年8月26日(月)付
犬猫の"殺処分ゼロ"めざす
公明党の主張が数多く反映された改正動物愛護管理法(動愛法)が9月から施行される。同法に盛り込まれた"殺処分ゼロ"の取り組みについて解説する。
最後まで飼う責務を明確化
自治体に引き取り拒む権限も
11年度は17.5万匹を殺処分
全国の自治体で引き取られる犬猫は、減少傾向にあるとはいえ、年間22万匹を超す(2011年度)。その8割程度(約17万5000匹)が殺処分されている【グラフ参照】。依然として多い。
引き取られる理由の多くは、「鳴き声がうるさい」「かわいくない」など、飼い主の身勝手と思えるようなケースが後を絶たない。犬猫を無計画に繁殖させてしまった末、引き取りを求める飼い主もいる。
そこで改正動愛法は、自治体の目標として「殺処分がなくなることを目指して」との文言を明記。飼い主や動物取扱業者にも、動物が命を終えるまで面倒をみる「終生飼養」の努力義務を課した上で、さまざまな対策を盛り込んでいる。
自治体が引き取りを拒否できる措置が設けられたのも、その一つだ。
現在、自治体が犬猫の引き取りを求められた場合、拒否できない。しかし、改正動愛法では、相当の理由がなければ引き取りを拒否できるようになる【表参照】。
このため、今後の自治体の対応が注目される。
群馬県高崎市に11年度に開設された同市動物愛護センターでは、正当な理由がなく引き取りを求める飼い主に、粘り強く説得し、引き取りを考え直してもらっている。引き取った場合も、積極的に新たな飼い主を探す。その結果、10年度に684匹だった犬猫の殺処分数は12年度に151匹と大幅に減った。
同センターの齋藤忍所長は「改正動愛法の施行で、(引き取り拒否の)法的根拠ができるので、われわれの考え方を理解してもらいやすくなる」と話す。
販売規制を強化へ
捨てられるペット減らす狙い
安易にペットが捨てられることを防ぐ狙いから、販売規制も強化される。
例えば、ペットの販売は、客に動物の現状を直接見てもらい、対面で説明することが業者に義務付けられる。
インターネットによるペット販売が広がり、「購入した猫が病気だった」「写真と違う子犬が送られてきた」などの問題が増えているためだ。ただ、ペットの現物確認と対面説明が済んだ後は、インターネット上で売買契約することは認められる。
犬猫の習性として生後間もない時期に親から引き離すと、かみつき癖などの問題行動が起こりやすいと指摘されている。
改正動愛法は、施行後3年は「生後45日」未満の犬猫の赤ちゃんを繁殖業者がペット販売店などに売り渡す行為を禁止する。
このほか改正動愛法では、売れ残った犬猫の扱いなどを定めた「健康安全計画」の策定を販売業者に義務付けたり、地域で放棄・遺棄された動物の保護を担う動物愛護推進員に対する国の支援も盛り込んでいる。
飼い主の意識向上などが必要
法改正によって前進する動物愛護施策だが、"殺処分ゼロ"を実現するためには、乗り越えるべき課題がないわけではない。
例えば、自治体で引き取りを拒否されても、飼い主が犬猫を不法に遺棄するケースが考えられる。
防止策の一つとして、ペットに飼い主のデータなどを登録するマイクロチップを装着する取り組みもあるが、普及は進んでいない。改正動愛法の付則には、マイクロチップの装着義務化を検討することが定められており、議論を深めていく必要がある。
また、行政の取り組みだけでは限界がある。
動物愛護団体などと連携し、新たな飼い主を探す対策を進めたり、飼い主の意識や責任感を高める広報、啓発活動に力を入れていくことも求められる。