e建て替え促進へ規制見直せ
- 2013.08.29
- 生活/生活情報
公明新聞:2013年8月29日(木)付
老朽化マンション
容積率緩和など所有者の立場で
老朽化したマンションの建て替えが進まない。
政府の規制改革会議は、経済の活性化に必要な5分野142項目にわたる規制見直しの実施計画を策定した。特に、重要な12テーマについては、進捗状況の監視や取り組み方法を9月から重点的に議論して具体化するが、マンション建て替えもその一つだ。
国土交通省の推計によると、マンションは全国で590万戸分譲されている。築30年以上の建物は129万戸を占めるが、このうち現在の耐震基準より低い基準(1981年6月以前の設計)は、106万戸に及ぶ。
旧耐震基準の建物は必ずしも脆弱ではないが、大地震にどこまで耐えられるか、不安は拭えない。阪神・淡路大震災では旧基準の建物の30%近くが大きな被害を受けたが、新基準の建物は数%にとどまったというデータがある。
建て替えれば安心だが、実施された件数は全国で183件にすぎない。ほとんどは、敷地が広く立地条件に恵まれた物件である。容積率の余裕分を生かして分譲戸数を増やし、それを販売して工事費用を捻出する。住民の経済的負担は少なくてすむ。
内閣府などが実施したアンケートによると、建て替えが進まない最大の理由として「既存不適格」が挙がっている。建築した当時は法律上の問題がなくても、その後の建築基準法の改正や都市計画の変更などによって、現在の法律に適合しなくなるケースが出てくる。新しい法律を踏まえて建て替えると、今の大きさの確保が難しくなる。政府の規制改革会議が見直しを要請している問題だ。
東京都では一定の条件を満たした場合、容積率や高さ制限などをある程度、緩和する制度を実施している。政府は参考にできないだろうか。
建て替えの決議は、マンション所有者の5分の4の同意が必要だが、合意形成はスムーズにいかない。工事費用の負担能力や建て替えに対する必要性の相違など、個別の事情が意見集約を阻む。
同意割合の見直しは、賛否が大きく分かれるだろう。慎重に議論を進めるべきだ。ただ、所有者から同意を得やすくするための対策や環境づくりを多角的に検討する必要はある。
南海トラフ巨大地震や首都直下地震の発生が危惧される今、老朽化マンションは道路や橋などインフラと同じく多くの人々の命に直結する問題である。建て替え促進対策を早急に実施しなければならない。