e認知症高齢者 社会全体で支援対策を
- 2013.08.31
- 情勢/社会
公明新聞:2013年8月31日(土)付
省庁の枠を乗り越え議論深めよ
政府は今週、認知症高齢者を社会全体で支える体制をつくるため、関係11府省庁で情報を共有する連絡会議の設置を発表した。9月中にも初会合を開き、議論を始める。
高齢者の増加に伴い、認知症の疑いがある人の交通事故や悪徳商法の被害、相続上のトラブルなど多岐にわたる問題が発生している。一つの省庁だけで対策を実施するには限界がある。
連絡会議は、さまざまな情報を各省庁で共有し、総合的な対策を推進していくのが狙いだ。縦割り行政を超えた取り組みに期待したい。
厚労省研究班の推計によると、2012年時点で65歳以上の高齢者3079万人のうち、認知症の人は462万人。認知症になる可能性がある軽度認知障害の人は400万人に及ぶ。認知症にかかる可能性は年齢とともに高まるので、さらに増えると予想されている。
認知症になると記憶力や理解力、判断力が低下し社会生活に支障が出る。徘徊や攻撃的な行動でトラブルを起こす場合もある。家族の精神的、身体的な負担は大きい。今後、患者が増えることで施設が不足し、在宅の患者が増えるとみられる。患者と家族が安心して暮らせる環境整備は喫緊の課題といえる。
各省庁は認知症高齢者の支援策を実施している。例えば、詐欺など犯罪に巻き込まれないように、金融庁は銀行の振り込め詐欺対策、総務省は郵便局の振り込め詐欺対策、法務省は財産を保護する成年後見制度に力を入れている。個別の対策は、一定の効果を挙げていることは間違いない。しかし、各省庁の対策を組み合わせれば、一段と実効のある取り組みができないだろうか。検討の余地はあるはずだ。
また、認知症が疑われる高齢者の交通事故も増えている。警察庁は免許証更新時に認知機能検査を実施して症状がないか調べている。一方、国土交通省は認知症の高齢者も利用しやすい交通機関の整備を進めている。双方で検討を進め、認知症高齢者が免許を手放しても外出しやすい環境が生まれれば、交通事故の減少が期待できる。
欧米では既に国を挙げた対策に乗り出している。英国では、首相の下にプロジェクトチームを設置して議論して、対策を策定した。米国も法律を制定して支援策を進めている。日本も急がなくてはならない。
患者やその家族らが安心して暮らせる環境をどのように構築するか。連絡会議で府省庁横断的な議論を深め、有効な対策を実施してほしい。