e解決への"道案内"法テラス
- 2013.09.05
- 情勢/社会
公明新聞:2013年9月5日(木)付
12年度の無料相談 31万件突破
情報提供、費用立て替えも
借金、離婚、職場でのいじめなど
借金や離婚などさまざまな法的トラブルに対し、解決に役立つ情報提供などを行う「法テラス」(日本司法支援センター)。2006年4月の設立から今年で8年目を迎え、東日本大震災でも被災者支援に大きく貢献し、その役割はますます重要になってきた。現状と課題を追った。
「息子が消費者金融から金を借りて行方不明。保証人になっていない親にも返済義務があるのか」「離婚裁判を起こしたいが、弁護士費用がない」「上司から嫌がらせを受けて退職したが、その勤務先に責任を問うことはできるか」―。法テラスにはさまざまな相談が飛び込んでくる。
こうした問題に対し、最初の窓口となるのが「情報提供業務」だ。全国どこでも、誰でも利用できる「法テラス・サポートダイヤル」や、「法テラス東京」などの地方事務所や出張所など全国110カ所で、電話やメール、面談で相談を受け付ける。債務整理の方法や、損害賠償請求といった法制度について情報提供し、弁護士会など相談機関を紹介することも。
「誰でも気軽に電話1本、匿名でも相談できることが強み」(法テラス東京担当者)だ。サポートダイヤルへの相談件数は、今年1月7日に累計200万件に達し、地方事務所への電話相談も含めると300万件を超えている。
経済的に余裕がない場合には、「民事法律扶助」を利用できる。弁護士や司法書士による無料法律相談と、弁護士や司法書士費用を立て替える代理援助などが柱。収入などが一定の基準以下であることなどが、利用に際しての条件となる。無料法律相談件数も、12年度は31万件を突破している【グラフ参照】。
長い間、自己破産に関する悩みを抱えていた利用者からは「スタッフの親切な対応と担当弁護士の親身な対応に大変感謝している。今後の将来設計に一筋の光を感じた」など感謝の声が。崖っぷちに追い込まれた人が再起したケースは少なくない。
近年、情報提供業務に寄せられる相談内容に変化が出ている。10年度までは多重債務など借金問題が最も多かったが、11年度には離婚などの男女・夫婦問題が最多になった。職場でのいじめなどパワーハラスメント(パワハラ)や解雇などの相談も増加傾向にある。
借金関係が減少したのには、貸金業への規制を強化した貸金業法が施行されたことで、多重債務問題が沈静化してきたためだと考えられる。労働関係の相談が増加したのは、08年のリーマンショック以降からだ。相談内容の変化は、時代を映す"鏡"とも言える。
国民に身近な法律相談窓口として定着してきたとはいえ、法テラスの認知度は11年に調査対象者の4割を超えた程度だ。法テラス本部の佐川孝志特別参与は、「今後も認知度向上をめざし、効率的な運営に取り組みたい」と述べている。
社会的弱者の救済へ積極的な働き掛けが必要
「司法ソーシャルワーク」へ
法テラスの存在を周知させることに加えて課題になっているのが、障がい者や高齢者、生活困窮者などの社会的弱者にどう手を差し伸べるかだ。こうした人々の中には法テラスの存在を知らない、もしくは自分が法的トラブルを抱えていること自体を理解していないケースもある。佐川特別参与は「相談を待っているだけでなく、今後はこちらからの積極的なアウトリーチ(手を伸ばすこと)も志向しなければならない」としている。
先進的な事例として注目されているのが、法テラス東京と葛飾区との連携だ。生活保護受給者の見守り活動に従事するケースワーカーと、「スタッフ弁護士」(法テラスの法律事務所で民事法律扶助などに取り組む常勤弁護士)がホットラインを結んでいる。生活保護受給者が抱える問題をケースワーカーが発見すると、電話で法的側面からの助言を受ける。
同区の行政担当者は、受給者がDV(配偶者などによる暴力)や借金、立ち退きといったさまざまな問題を抱えていることに触れ、「電話1本で専門家から法的な助言を得られることは心強い」と語る。法テラスでは、このような取り組みを「司法ソーシャルワーク」と呼び、全国に波及させていく考えだ。
東日本大震災の被災者支援でも法テラスは大きな役割を果たしてきた。発生直後の11年3月31日から、避難所などで民事法律扶助制度による巡回法律相談を開始。現在7カ所の被災地出張所で、無料法律相談や弁護士費用の立て替えを実施。相談設備を備えた車両による巡回相談も行っている。
12年度には、公明党の推進で法テラスの利用条件を緩和し、被災者に使いやすくするための、いわゆる震災特例法も施行された。従来の民事法律扶助を利用する際の資力要件が撤廃され、被災地での法律相談件数は累計4万件(今年4月現在)を突破している。
公明が一貫して推進
公明党は、"国民のための司法"をめざし、制度改革に一貫して取り組んできた。国の責務で、経済的に苦しい人の民事裁判費用を立て替える「民事法律扶助」制度は00年、公明党の強い主張で法制化された。
その後も公明党は司法制度改革の一環として、民事・刑事問わず、法的トラブルの解決を「国の責務」とした「総合法律支援法」の成立(04年5月)をリード。この支援法に基づき、法テラスが創設され、民事法律扶助の業務も引き継がれた。党青年局が粘り強く主張した若者向け無料法律相談窓口なども、法テラスの業務に反映されている。
今年8月6日には、党法務部会(遠山清彦部会長=衆院議員)が、来年度の概算要求に関する重点要望項目を法務省に提出し、法テラスへのさらなる支援拡充を求めている。