e出産支援 産後ケアの全国展開を
- 2013.09.24
- 情勢/解説
公明新聞:2013年9月24日(火)付
母子を支える施設の整備が必要
子どもを産み育てやすい社会を実現するには、妊娠から出産、子育て期までの切れ目のない支援が重要だ。
現在の少子化対策は、待機児童の解消や仕事と子育ての両立支援などに光が当たっている。それも大切で、しっかり進めなければならないが、妊娠・出産の時期への支援も充実させていく必要がある。
核家族化が進行し、地域のコミュニティーも希薄化する中、一人で悩み孤立する母親は多い。自分の両親が高齢だったり、働いていて、全面的に頼れないケースもある。
出産後の女性は、ホルモンのバランスが変調を来し、一時的に情緒不安定になりがちだ。
さまざまな事情で公的な支援の必要性は高まっている。
注目されているのが、出産直後の母子の心身をサポートする「産後ケア」の取り組みだ。助産師などが付き添って授乳指導や育児相談を行う。母親にとって、とても心強い存在になるに違いない。
公明党も開設を推進した東京都世田谷区の産後ケアセンターは、予約がなかなか取れないほどの人気という。出産後4カ月未満の母子が宿泊や日帰りで滞在でき、助産師らの専門スタッフが24時間体制で支援する。こうした取り組みを全国に広げたい。
厚生労働省の研究班が昨年度に実施した自治体アンケートでは、世田谷区のような施設での宿泊型産後ケア事業を行っている市町村は、わずか2%しかなかった。自宅を訪問して家事などを手伝う産後ヘルパー事業も13%にとどまった。自治体は出産後の母親支援に、もっと手を差し伸べるべきではないか。
また、同アンケートでは母親に対するケアのニーズとして、ヘルパー派遣などの家事援助や育児相談の場、母親が休養できる支援、母子のショートステイなどが挙がっていた。政府は要望の出た対策の充実を検討してもらいたい。
厚労省は来年度予算の概算要求で妊娠・出産支援を大幅に強化し、産後ケア事業を含むモデル事業の実施を盛り込んだ。心身のケアや育児サポートを行う産後ケア事業には5.2億円、助産師らによる相談支援やシニア世代が話し相手になるなどの支援を行う産前・産後サポート事業には2.3億円を計上。全国40市町村での実施をめざす。
モデル事業をきっかけに、類似した制度を開始する自治体の登場を期待したい。
地域や社会全体で子育てを応援する時代である。政府や自治体は、出産や育児に関する不安を少しでも取り除く体制整備を急いでほしい。