e進む中小企業支援
- 2013.10.04
- 情勢/経済
公明新聞:2013年10月4日(金)付
本格的な景気回復へ
設備投資意欲に応える
新たな経済対策で補助金、減税
各種税制で生産性向上促す
1日、政府が策定した経済対策には、景気を本格軌道に乗せるために欠かせない中小企業支援策が盛り込まれた。中でも注目したいのが、補助金や減税などを通して中小企業の設備投資を強力にサポートする仕組みを盛り込んだことだ。ものづくりの現場の声とともに、今回の対策のポイントを紹介する。
中小零細企業が集積する東京都墨田区にある株式会社石井精工。従業員は11人。自動車関連を中心に医療器具やスポーツ用品をはじめ、幅広くゴム金型の製造を手掛ける。顧客ニーズに対応する確かな技術力に信頼が寄せられ、年間250程度の金型製造を請け負う。
9月末、同社は念願だったNC旋盤を新たに導入した。位置データなどを記憶させて自動的に加工する工作機械の一種だ。近年、金属加工の引き合いも増えてきていたが、これまでは自社に対応できる機械がなかったため、やむなく外注していた。今回の設備投資で社内での加工が可能となり、経営効率化を一層見込めることになった。
今回、同社の機械購入を後押ししたのは、中小企業が設備投資を行う場合に国が3分の2を支援する「ものづくり補助金」。民主政権下の事業仕分けで一度廃止されたが、2012年度補正予算で自公政権が復活させたものだ。石井隆司社長は「この制度があったから今回の設備投資を決断することができた」と喜びを隠さない。
企業の設備投資は、景気動向を左右する指標の一つ。ここに勢いがあるかないかは、景気判断の重要な分かれ目になる。
興味深いデータがある。7月に東京商工会議所が中小・中堅企業1011社を対象に行った調査だ。それによると、今後3年間に「生産設備の設備投資計画がある」との回答は63%に上った。目的には「老朽設備の更新」を挙げた企業が最も多く、コスト削減や加工精度を上げて生産性アップにつなげたいという経営者の意向が浮かび上がる。
だが一方で、設備投資は大きな出費を伴う。意欲はあっても多くの中小企業が二の足を踏んでいるのが現実だ。中小零細企業の経営者からは「仕事の単価が抑えられている中で、1000万円前後かかるような工作機械への設備投資は正直ムリ」といった嘆きはよく聞こえてくる。また、「中小企業が利用しやすい投資減税が創設されるのであれば、機械を更新したい」と、政府の"次の一手"に期待する声もあった。
1日に政府が打ち出した経済対策は、こうした現場の声を捉えた公明党の強い主張を踏まえ、特に中小企業に深掘りした内容になった。
12月上旬に確定する新たな経済対策で、競争力強化策として中小企業に重点を置いた投資補助金などの設備投資支援策を打ち出す。
税制関係では、中小企業投資促進税制が抜本拡充される。これは160万円以上の機械、あるいは120万円以上の一定の工具、器具などを対象に取得金額の7%の税額控除などを行うもので、17年3月末まで3年間、延長する。さらに、対象企業を大幅に広げ、資本金3000万円以下を同1億円以下に拡大。7%の税額控除、または即時償却ができるようにする。資本金3000万円以下の企業については控除率を10%に引き上げる。
中小企業が70万円以上のソフトウエアやサーバーを導入することで投資利益率が5%以上であれば、即時償却または税額控除ができる仕組みも設けられるほか、11月施行予定の改正耐震改修促進法で耐震診断が義務付けられた商業施設、旅館など不特定多数が集まる建物の固定資産税について、工事が完了した翌年度から2年間、50%減額する。
1日に日銀が発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)は、全産業の景況感が5年9カ月ぶりでプラスに転じた。景気回復の裾野が大企業だけでなく中小企業にも広がり始めている。持続的な成長軌道に乗せるためにも、今回の経済対策は重要なポイントを握る。
江田 康幸 公明党経済産業部会長
現場の声もとに踏み込んだ内容
今回、政府が策定した経済対策のポイントの一つが、中小企業の設備投資意欲を具体的に引き出す仕組みをつくることだった。
実際、ものづくりの現場や党経産部会での関係者からの意見聴取を通して、「古くなった機械を更新して、攻めの経営に転じることを支援してほしい」といった要望を少なからず聞いた。
こうした生の声を踏まえ、部会では8月末、茂木経済産業相に対し、成長戦略の柱として中小企業の設備投資を強力に後押しする税制の抜本的な拡充などを、あらためて要請した。
当初、経産省内には中小企業に光を当てた制度拡充の方針が明確ではなかったようだが、最終的に一歩踏み込んだメニューになった。
日本経済を本格的な成長軌道に乗せるために、公明党は切れ目なく支援策を実行していく。