e経営側の賃上げ発言 前向きな方針転換を評価

  • 2013.10.21
  • 情勢/経済

公明新聞:2013年10月21日(月)付



消費刺激はデフレ脱却に最も有効



政府、労働者、使用者(経営者)の各代表による雇用改善に向けた議論が続けられている。政労使会議の焦点は、賃金の引き上げだ。

大手企業のトップが、長年に及ぶ賃金抑制から引き上げへの方針転換を示した。第2回会議に出席したトヨタ自動車の豊田社長は「業績が上がった分、(賃上げで)従業員に還元するのは当然」と強調。同席した日本経済団体連合会(経団連)の米倉会長も「経営環境は目に見えて好転している。設備投資、賃上げのかたちで収益を回していきたい」と前向きな発言をした。指導力を発揮し、賃上げを実現してほしい。

産業界に影響力を持つ大手企業の賃上げは、日本全体に同様の動きを広げるだろう。兆しはある。東京商工会議所が東京23区内の中小企業を対象にした賃金状況の調査によると、回答企業の3社に1社が今年4~7月に前年同期より賃金総額を増やした。日本商工会議所が全国の中小企業(3125社)を対象にした調査でも、37.9%の企業が今年4月以降のベースアップ(ベア)か定期昇給を実施している。

賃上げ発言が相次いだのは、自公連立政権による5兆円規模の経済対策が、来年4月の消費税率引き上げによる景気の悪化懸念を打ち消したからだ。

日本経済最大の課題だったデフレ脱却の好機が芽生えてきた点も大きい。大胆な金融緩和などの政策効果で株価が回復、企業業績も改善した。企業の利益剰余金(内部留保)は、過去最高の約300兆円を計上した。

今回の景気回復は、個人消費や企業の設備投資が堅調に伸びていることに加え、非製造業部門の回復が顕著な点で「典型的パターンと異なる景気回復」(黒田日本銀行総裁)だ。急激な景気減速に陥る可能性も小さい。賃上げを検討するには、最適である。

デフレ脱却を確実にするには業績改善を賃上げに結び付け、消費を刺激することが最も有効だ。企業の賃上げ努力に応える政策支援も必要不可欠である。

給与を増やした企業の法人税を減税する「所得拡大促進税制」の拡充がその一つだ。特に、製造業では子育て世代である30代の賃金抑制が顕著である。同世代は消費意欲も強い。全家計の所得増につながれば経済効果は明らかだ。

デフレによる企業の過剰な商品値下げ競争を収束させ、労働者に低賃金を強いる内向き志向の経済から脱け出す時である。

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