e参院予算委での公明党の質疑(要旨)
- 2013.10.25
- エンターテイメント/情報
公明新聞:2013年10月25日(金)付
24日の参院予算委員会で公明党の魚住裕一郎参院会長、竹谷とし子さんが行った質疑(要旨)は次の通り。
魚住裕一郎 参院会長
消費税と経済
下請けの賃上げ進めよ
増税分使途で首相 「全額を社会保障財源化」
魚住裕一郎参院会長 10月1日に消費税率8%への引き上げの最終判断をされた。国民の中には、消費税率アップの増収分が経済対策に使われるのではないかと思っている方もいる。社会保障にしか使わないことをあらためて確認したい。
安倍晋三首相 3%の引き上げ分の消費税収は全額、社会保障財源化し、経済対策の財源に充てることはない。
魚住 経済対策の中で、違和感を感じたのが、復興特別法人税の1年前倒し廃止だ。法人も個人も震災復興に絆を強めようと作った税制だ。復興財源の確保、被災地の理解、そして賃金上昇につなげられる方途と見通しを確認する条件を付けたが、特に下請け企業の賃金の引き上げをどうやって図っていくのか。
首相 消費税率の引き上げによって、(デフレ脱却や経済の好循環を実現する)チャンスが手からこぼれ落ちるようなことがあってはならない。経済政策パッケージにおいて、足元の経済成長を賃金上昇につなげることを前提に、復興特別法人税の1年前倒ししての廃止を検討して12月中に結論を得ることとした。異例の措置を経営者の皆さんに理解していただくことが大きなポイントだ。
法人税納税企業のほとんどは中小企業だ。効果は大企業のみならず中小企業を含め、広く及ぶと考えている。
魚住 1日に日本経済再生本部が成長戦略の実行方針を示した中で、米国のNIH(米国立衛生研究所)の日本版をつくり、医療の開発などについて取り組むとしている。医療・研究分野の司令塔となる「日本版NIH」の意義と目的、さらに成長戦略にどう寄与することができるのか。
菅義偉官房長官 医療技術の開発をいかに患者の回復につなげるか極めて大きなことだ。技術開発、治験をスピード感を持って行うことができる体制をつくり、経済再生につなげていきたい。
震災・災害対応
特別警報は人命優先で
太田 国交相 「情報は直接自治体へ」
魚住 今年8月に設けられた特別警報が、多くの犠牲者が出た台風26号による伊豆大島(東京都大島町)の災害では発出されなかった。現場の首長が警報を判断しやすい伝達方法など、人命を守ることを最優先に発令基準の見直しを。
太田昭宏国土交通相 特別警報を出す際には広域で雨量、雨域、風量のデータを観測し、その観測点も必要。島しょ部などの局地的な範囲では、そのデータの精度が悪くなり特別警報を発表しにくい。しかし、何としても人命を守らなくてはいけないという観点から、「特別警報」に準ずるような大雨の場合、気象庁から自治体首長へ「特別警報」相当の対策が必要である旨、危機感を直接伝える態勢を整えることにした。全国の島しょ部を対象とするよう併せて指示した。
伊豆大島に台風27号が接近しているが、情報を直接、電話と書類で時々刻々と知らせる態勢を取る。
魚住 (東日本大震災の)被災地の応急仮設住宅について、バラバラで応急仮設に入っている大家族の方のコミュニティーが分散されてしまっている問題への対策を始めるべきではないか。
古屋圭司防災担当相 震災被災地の応急仮設住宅での暮らしは長期化している。家族のバラバラ感を解消する視点から、仮設住宅に空きがある場合は移っていただく方向で対応していく考えで、被災地の自治体とも相談していきたい。
シリア情勢
難民への人道支援 きめ細かく
魚住 シリア国外の難民が200万人を超えている。受け入れ国も大変な状況だ。石川博崇参院議員を党として派遣し、ヨルダンやイラクにいる難民の状況などの報告を受けた。きめ細かい人道支援をしていくべきだ。特に母子、女性への暴力を防ぐための支援策が必要であり、キャンプでは水や衛生など医療保健の分野、あるいは難民キャンプに居住していない方に支援の手を差し伸べていただきたい。
岸田文雄外相 極めて深刻な状況であると認識している。女性、教育分野においても引き続きしっかりと人道支援を中心に継続していきたい。
魚住 シリアの和平プロセスに日本がどう介入していくのか。情報を収集して分析体制をつくっていくことが大事だ。専属担当の特使をつくり、具体的に働き掛けることができる環境をつくっていくべきだ。
外相 さまざまな国際会議で、われわれも貢献する用意があると各国外相に説明している。引き続き、わが国としてシリア問題にしっかり取り組むべく体制強化に努めていきたい。
ストーカー規制
魚住 今月8日に東京・三鷹市で起きたストーカー殺人事件では、被害者が危険な時は避難させなければいけないという過去の事件の教訓が生かされなかった。今回の事件の検証を、被害者保護の観点から警察はもちろん、第三者も含めて徹底的に行うべきだ。
古屋圭司国家公安委員長 第三者による検証は、来月1日から有識者検討会を立ち上げ、幅広く検討していく。その上で、被害者の安全確保に万全を期するよう警察を督励する。
魚住 (元交際相手のプライベートな写真や動画をネット上に掲載する)「リベンジポルノ」が問題になっている。実際に投稿されてしまった画像などを、どのように消すのか。「表現の自由」などとの関係も考慮しながら、対策を講じてほしい。
国家公安委員長 ネット上の違反・有害情報の積極的な取り締まりや、サイト管理者への削除要請で保護に当たっていくことが重要だ。
竹谷とし子さん
台風被害
二次災害防止へ対策急げ
竹谷とし子参院議員 東京・伊豆大島では、台風27、28号による二次災害が懸念されている。土砂災害などの被害を防ぐための専門的な知見、技術は町では対応できない。あらためて支援、対策をお願いしたい。
国交相 三つの対策を講じている。一つは監視カメラを5台設置し、常時監視している。もう一つは、大きな崩落が起きた所に、東京都による大型土のうを活用した応急対策工事を行った。そして、詳細な気象情報の提供だ。絶対に二次災害を起こさないという決意で取り組んでいる。
行財政の見える化
公会計を変え、財政改善
税金の使い道 適正と実感される努力を
竹谷 公会計制度の見直し、財政の見える化について所見を伺う。先日、公会計改革が進むスウェーデン、イギリスに赴き、最新の調査をしてきた。スウェーデンは高福祉・高負担で有名だが、過去に財政危機を乗り越えて財政再建を果たした歴史を持つ。財政危機だった1990年代、10年物の国債金利が半年で4%も急上昇した。生活上の痛みを国民が身をもって感じたからこそ、経済成長政策と並行して、増税、歳出削減による財政改革を国民が受け入れることができたと推察する。日本は債務のGDP(国内総生産)比率が先進国の中で一番高いが、過去最低レベルの低金利は継続しているおかげで、金利高騰のような財政危機の痛みを国民が感じることはない。
首相 仮に、海外や市場の信任が損なわれるといったリスク(危険性)が顕在化した場合、国債価格の下落や金利の上昇等によって、日本経済と国民生活に深刻な影響が生じる可能性がある。そのような事態を招くわけにはいかない。
竹谷 税金が適切に使われていることを実感してもらえる努力が必要だ。スウェーデンの財政改革では、国民の税金を使って適切に政策を実施していることを国民にお知らせするため、国の会計制度を複式簿記・発生主義という民間の会計に近いやり方に変えた。財政再建に取り組むイギリスでも、財政を改善させたオーストラリアやニュージーランドも同様だ。
日本でも取り組みが進みつつあるが、国会審議の場では、明治時代のままである単式簿記・現金主義会計の論議が中心だ。国民に負担をお願いする以上、公会計制度を改革すべきだ。日本の公会計を変え、財政の改善に取り組んだ歴史をつくってほしい。
首相 国の信認、国民の増税に対する理解を得る意味で、税の使い道の透明性も重要だ。
ムダ削減できる行政機構に
竹谷 社会保障給付費が110兆円と言われても、国民にはピンとこない。社会保障給付費の国民1人当たりの平均額が80万円となると、身近に感じる。特別養護老人ホームの利用者1人当たりでは、約380万円の公費が使われているが、「そんなに掛かっているとは知らない」と言われる。これは、お知らせする努力を政府がしていないということではないか。
田村憲久厚生労働相 分かりやすい工夫をしていきたい。
竹谷 会計には行政のPDCA(計画、実行、評価、改善)を回し、マネジメント(経営)に使っていくという役割もある。政府、行政の統治の仕組みを変えていくことも重要だ。
イギリスやスウェーデンでは、政策の責任者は大臣、そして、その政策目標を達成するための予算の執行責任を持つのは次官、あるいは行政機関の長というように分けている。達成したかどうかを政治家は厳しく問われる。そして行政の執行機関は適正に予算を使ったかが問われる。自発的にムダ遣いを削減していくよう、ガバナンス(統治)を変えていくことに一考の余地があるのではないか。
首相 行政機関の会計ガバナンスのあり方については、指摘を踏まえて、さまざまなアイデアを参考にさらに勉強していきたい。