eNPOで働きたいんです
- 2013.11.05
- エンターテイメント/情報
公明新聞:2013年11月4日(月)付
就職希望の若者が増加
重なる職探しと"自分探し"
「何歳まで働けるのかな?」
「やりがいや充実感はあるか聞きたいね」
「正直、収入はどうだろう?」
10月30日、東京都新宿区内にあるオフィスビルの一室で、若者たちが率直に話し合う。「NPOについて知りたいこと」をテーマに行われたグループワークの一コマだ。
ここは、人材育成などを柱にNPOの活動を支援する特定非営利活動法人「NPOサポートセンター」。この日は、NPOへの就職・転職希望者を対象にした「NPOキャリアカレッジ」の初日だ。カレッジの期間は5カ月間。NPOの基礎や専門知識の習得、現場体験などNPOで働くための研修を受けられる。同センター事務局長代行の小堀悠氏がNPOの現状や特徴などを丁寧に解説。参加者は真剣に聞き入っている。
「大学時代から国際協力分野の非政府組織(NGO)で働くことに興味があった。このカレッジを通じて具体的にどのような団体があるのかを知り、自分の興味を絞りたい」。こう話すのは、参加者の1人で社会人5年目の女性(26)。
同じく参加者の男子学生(22)は「就職を考える上で、自分が興味を持っていたことがNPOの活動内容と重なっていた。周りの友達は『民間企業か公務員しかない』と言うが、その選択肢だけしか考えないのはどうだろうと思っていた」と、受講の動機を語ってくれた。
職探しは"自分探し"とも重なり合っているようだ。ここには、熱い思いを抱えながら、必死に将来を模索する若者たちがいた。
与えられた仕事ではなく、自ら問題解決の仕組みつくる
実際にNPOに転職した若者にも話を聞いた。
若者の自立・就労支援などを行うNPO法人で働いている男性のAさん(28)。東日本大震災でのボランティア活動を通じて、NPOに親しみを感じ、サポートセンターでの研修を受けた後、今の職場に就職した。仕事への感想を聞くと、Aさんはハキハキと答えた。「困っている人のために役立つ仕事に就きたいと思っていた。その意味で、自分のやりたかった仕事に就けたことが、やる気につながっている」。
NPOへの就職に不安や戸惑いはなかったのか。Aさんは「最初に就職した大手のメーカーには、研修や社員教育のシステムがあったが、NPOには、それらがないところが多い。今の給与も大手メーカーの新入社員時代に比べて3分の2くらい」と語った。
給与などの待遇は恵まれているとは言えないが、どこにやりがいを感じているのか。「企業にいた時は"与えられる仕事"が多かった。社会的な問題に向き合う今の職場では、一つの課題に取り組めば別の課題も生まれる。それらに対し、解決する仕組みをつくることに携われることが、とてもうれしい。この仕事の一番の魅力だ」。
早期離職など課題も
NPOサポートセンターによると、NPO法人で働くスタッフ数は無給のスタッフを含めて全国で推計44万人。常勤有給職員の給与は年間で平均205万円(内閣府調べ)と低い。
それでも、NPOを希望する若者は増えてきている。同センターは、2011年からNPOの合同就職説明会を開催。参加者は毎年増加し、11年の306人から今年は483人と、約1.6倍になった。人数だけでなく、参加者の"本気度"も上がってきている。初年は「そもそもNPOの仕事とは」といった情報を求める人が多かったが、「年を追うごとに『この団体には、どのような条件で就職できるのか』などと、就職を前提に相談する人が増えてきた」(小堀氏)という。
こうした傾向の背景にあるのが、仕事に対する若者の価値観の変化だ。「就職活動中の学生だけでなく社会人も、単に『お金を稼ぐため』というより、仕事の意義や充実感、やりがいを優先する人が多くなってきた」(同)。社会貢献への意識の高まりを指摘する声もある。若者の就職意識がNPOの活動内容と結び付きやすくなってきているようだ。
一方、同センターによると、NPOへの就職希望者は、(1)NPOスタッフに求められる役割、具体的な業務内容が分からない(2)求人情報が入手できない(3)給与や福利厚生面など雇用環境が不安―といった悩みを抱えている。
約3割の団体で1年以内にスタッフの1割以上が退職するという。若者の望み通りにはいかない実態もある。働き方についての情報不足による雇用のミスマッチを防ぐためにも、NPOの社会的な認知度を上げる取り組みが急がれよう。
NPOサポートセンターでは、NPOの現役スタッフを迎えた連続セミナーを開催します。お申し込みは、https://ssl.form-mailer.jp/fms/be06aab4272396、または電話番号03(3547)3206まで。