eコメ政策の転換点
- 2013.11.05
- 情勢/社会
公明新聞:2013年11月5日(火)付
「減反」見直しは農家の
理解得る努力が必要
経営所得安定対策 持続可能な制度設計に
実りの秋。食卓でおいしい新米が味わえる季節ですが、国政では今後の水田農業を大きく左右する議論が展開されています。農家の経営所得安定対策(旧・戸別所得補償制度)を新しい内容に変更する議論に関連し、40年余り続いてきたコメの生産調整(減反)の抜本的見直し論が浮上しています。
減反とは、主食用のコメの供給が需要を上回ることで生じる値崩れを防ぐため、1971年から本格的に始まった政策です。第二次世界大戦後、食料確保のためにコメの増産が進む一方、日本人の食生活が豊かになるにつれて肉や麺類などを食べる機会が増え、コメが余るようになったことが背景にあります。
国は毎年、主食用のコメの消費量を予測して生産量の目標(生産数量目標)を決め、それに基づき都道府県が農家に作付面積を割り振っています。つまり、農家にコメの生産を意図的に抑えてもらう仕組みです。
しかし、コメの消費量は、人口減少や少子高齢化も影響し、年々減少する傾向に歯止めがかかっていません【グラフ参照】。2012年度のコメ消費量は1人当たり年間56.3キログラムで、1960年代の半分にまで落ち込んでいます。いくら減反を強化しても、消費減少に追い付かない構造的な供給過剰に陥っているのが現状です。
新たな制度設計が議論されている経営所得安定対策は、減反と密接に結び付いています。現行制度はコメ農家に対し、減反への参加を条件に水田10ヘクタール当たり1万5000円の補助金を支給するのが主な内容。事実上、減反に協力してくれた見返り(メリット措置)になっています。
この制度は、前の民主党政権が「戸別所得補償制度」として導入しましたが、補助金の金額や対象、政策目的などの面でバラマキ色の払しょくが課題です。持続可能な制度設計に向けて現在、見直し作業が進んでいます。この中で議論はコメ政策の在り方にまで拡大。政府の産業競争力会議からは、補助金改革にとどまらず、減反が自由なコメ生産の阻害要因になっているとして廃止論まで出てきました。
政府与党は、今月末までに経営所得安定対策の見直し案とともに、減反の方向性を示す方針です。しかし、急激な農政転換は農家の混乱を招きかねず、公明党の井上義久幹事長は「生産者の十分な理解を得ながら進めることが重要だ」と強調し、慎重に議論を進める考えを示しています。