e暴力団融資問題 信頼回復の取り組みを
- 2013.11.15
- 情勢/解説
公明新聞:2013年11月15日(金)付
審査の厳格化とチェック機能の強化で
信頼は金融の命だが、それが大きく傷ついた。
みずほ銀行が暴力団関係者への融資を2年以上にわたって放置していた問題が、13日の衆院財務金融委員会で集中審議された。
問題の発端である「提携ローン」は中古車などの購入時に利用され、信販会社を介して同行が間接的に融資する仕組みだ。万が一、融資先が反社会的勢力(反社)の場合、同行の保有情報に基づいて最終的に排除できるはずだった。
それが結果的に機能しなかった要因の一つに、同行は東日本大震災直後のシステム障害という物理的な混乱要因を挙げた。しかし、問題の本質は反社との関係遮断に取り組む重要性への認識不足にあるのではないか。
そう疑われても仕方がない事実が明らかになってきた。集中審議で焦点となったのは、なぜ金融庁に事実と異なる報告をしたのか、だった。同行は昨年12月から行われた金融庁検査で、問題融資の情報伝達は「担当役員止まりだった」と説明していたが、その後に銀行の最高責任者である歴代頭取にも報告されていたことが判明。佐藤康博頭取は「隠蔽を示す証拠は認められなかった」と釈明したが、まるで人ごとのように聞こえた。
組織の信頼を根幹から揺さぶる情報が放置されたこと自体信じがたいものだ。マネーロンダリング(資金洗浄)につながりかねないと海外メディアの目も厳しい。金融庁検査を軽視したと見られても当然だろう。
金融庁の監督責任も重い。問題融資の存在は法令順守関連の会議資料に記されていたが、検査時の同行担当者の説明をうのみにして資料自体を確認しなかったからだ。不正を見抜けない検査では無意味である。
同庁は反社の定義を監督指針で暴力、威力と詐欺的手法を駆使して不正利益を追求する集団や個人としている。しかし、その運用は各行の保安対策上の理由から一律ではない。そのため、取引の入り口段階では反社でなくても、保証人などの形で反社が紛れ込むことも少なくない。反社の認定は、個人情報が絡む難しい作業でもある。
このため、日本証券業協会は株式投資などの口座開設で、申込者が暴力団関係者でないか警察庁と連携して審査するシステムを今年から運用している。銀行界としても、このような取り組みを参考に、不正行為を常時チェックする体制を強化するべきだ。
信頼回復に向けた抜本的取り組みを求めたい。