eシリアの化学兵器 廃棄は国際社会の協力で
- 2013.11.18
- 情勢/解説
公明新聞:2013年11月18日(月)付
技術支援など日本も一翼を担え
オランダ・ハーグにある化学兵器禁止機関(OPCW)の執行理事会で、シリアが持つ化学兵器を国外に搬出し廃棄する計画が先週末に採択された。
計画は、遅くとも年内に毒性の強い化学物質を国外に搬出し、来年3月末までに廃棄。残りも2月5日までに国外に運び出し、6月末までに全廃する。シリア国内に残った生産設備はシリア側が3月半ばまでに破壊する。
ただし、搬出した化学物質の処理の受け入れ先は、数カ国に打診されているが、まだ決まっていない。受け入れ国の決定に時間がかかれば、期日までのシリアの化学兵器全廃という目標の達成に支障が出てくる恐れがある。
化学兵器全廃の流れを主導した米ロ両国だけでなく、国際社会の総力を挙げて、早急に決めてほしい。
1997年発効の化学兵器禁止条約の下、保有国以外の国での廃棄実施は先例がない。通常、加盟国は2年以内に廃棄作業を開始、10年かけて完了させることになっているが、今回は7カ月余りで全廃をめざす。今月中に受け入れ国が決定しても、かつてない短期間での作業となる。
化学兵器の廃棄処理には技術、資金、人材などの幅広い支援が必要だ。
日本は、旧日本軍が中国に遺棄した化学兵器の廃棄で高い技術力を示した。地下鉄サリン事件において、サリン処理の経験もある。このため、安倍首相は9月の国連総会で「能う限りの協力」を表明しており、日本の積極的な貢献に国際社会から期待が寄せられている。
今回、化学兵器廃棄の費用は、各国の任意の資金提供でまかなわれる。しかし、十分な費用は確保できていない。拠出国を増やし、何とかめどを立てなければ計画を実施に移せない。
内戦中のシリアで化学兵器を廃棄する作業は、技術的な問題だけでなく、作業担当者の安全確保や経済支援も欠かせない。特に、搬出は戦闘で輸送インフラが破壊されている状態での作業になるので、困難を伴う。
シリアの化学兵器廃棄は、内戦終結に向けた第一歩であるだけではなく、将来の大量殺戮兵器廃絶の試金石にもなる。先月、OPCWにノーベル平和賞が授与された理由の一つにも、こうした期待が込められているのだろう。
化学兵器の全廃は、国際社会が協力して、さまざまな困難を乗り越えて進めなければならない。日本も、その一翼を担うべきだ。