eGDP伸び鈍化 民間主導の景気回復を
- 2013.11.19
- 情勢/解説
公明新聞:2013年11月19日(火)付
企業は賃上げ、設備投資に踏み出せ
日本経済の目標は、持続的な成長を取り戻すことである。短期間で終わる景気浮揚策の実施ではなく、民間主導の力強い経済回復をめざさなければならない。
今年7~9月期の実質国内総生産(GDP)の成長率は、年率換算1.9%と4四半期連続のプラス成長を維持したが、前期(4~6月期)の年率3.8%に比べて減速した。GDPの勢いが落ちたのは、個人消費の伸びが一服したからだ。新興国の景気鈍化で、輸出がマイナスに転じたこともある。
しかし、景気が後退局面に入っているわけではない。1%弱とされる潜在成長率を依然として上回る景気の現状は、日本経済の実力が着実に底上げされている証拠だ。その意味で「内需は底堅く、景気は引き続き上向いている」(甘利経済再生相)との見方は妥当である。
これは、自公連立政権の経済再生策が効果を発揮しているからだ。今後、日本経済を自律的な成長軌道に乗せるためには、企業の役割が今まで以上に比重を増していく。
まず、手控えてきた設備投資に取り組む姿勢が求められる。設備投資の活発化による生産性の向上は、雇用の大幅増加などの経済波及効果が期待できよう。
企業の利益剰余金(内部留保)は約300兆円に積み上がったが、長い景気低迷の記憶から設備投資に対する姿勢は及び腰のままだ。成長戦略には、「思い切った投資減税」の実施が盛り込まれている。税制優遇策を活用して、設備投資に踏み出してもらいたい。
もう一つは、個人消費の刺激である。抑え込まれてきた賃金の引き上げが最も有効だ。今年7~9月期の「名目雇用者報酬」は、2012年同期比0.5%増と2四半期連続で伸び、賃金水準アップに向けた環境は整いつつある。大手企業の経営者から、賃上げに前向きな意見が相次いでいることも心強い。特に、企業決算で大幅な収益を得た事業者は、積極的な賃上げを検討、実施してほしい。
賃上げと設備投資に取り組む企業が報われる環境づくりも必要だ。今国会での成立をめざす産業競争力強化法案は、"攻めの経営姿勢"を取る企業の利益を改善することが目的だ。企業独自の技術開発を支援する「企業実証特例制度」など大胆な規制緩和策を盛り込んでおり、新産業の創出も期待できる。
民間主導の経済成長に転じて、力強い景気回復を実現すべきだ。