e再エネ固定価格買取り 多様な資源の活用めざせ
- 2013.12.02
- 情勢/解説
公明新聞:2013年11月30日(土)付
風力や地熱などの普及に軸足を
経済産業省が再生可能エネルギー(再エネ)電力の固定価格買い取り制度(FIT)について、新しい買い取り価格を検討している。
FITは電力会社が再エネを固定価格で一定期間買い取ることにより、発電企業の建設費用の安定的回収と大胆な再エネ投資を促進する制度。
現在、買い取り価格が最も高いのは太陽光だ。企業が設置する大規模な太陽光発電(出力10キロワット以上)で、買い取り価格は1キロワット時37.8円(今年度)。風力発電の23.1円より、14.7円高い。順調に政策効果を上げており、全国で導入されている発電設備の9割は太陽光である。
ただ、企業を中心に"太陽光発電バブル"とも呼べる動きが懸念されている。買い取り価格は年度ごとに見直されるが、価格が高い時期に設備認定だけを受け、発電のための稼働を後回しにする悪質な企業が見受けられる。高価格で買い取ってもらう権利を長期間確保し、利ざやを得る意図がある。
こうした背景の中で、中長期的な国のエネルギー政策の方向性を決める政府のエネルギー基本計画の見直し作業が、年内策定をめざして進んでいる。計画の焦点は、多様な再エネを安定的に活用するための支援の在り方だ。
経産省の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の資料によると、太陽光発電の新価格は今年度から2年かけて2割程度引き下げる方針である。風力や地熱、水力などの価格は現状を維持する。
太陽光発電は成熟した分野であり、今後も自律的成長が見込める。新価格は、太陽光に比べて普及が遅れている再エネの利活用に徐々に軸足を移す狙いが伝わってくる。FITの不正利用を防ぐ点でも、経産省の方向性は妥当だ。
福島県沖では、浮体式洋上風力発電が運転を開始した。世界初の商業化をめざす。将来的には、原発1基分に当たる約100万キロワットにまで拡張する計画だ。太陽光に次ぐ有力な電力資源へ成長する可能性は高い。
火山国の日本では、地熱の出力も安定している。天候に左右されない純国産の電力として、これまで21施設が稼働。総資源量は約400万キロワットとみられ、開発が急務だ。
政府の新しいエネルギー基本計画は、原発に依存しない社会構築への第一歩となる内容にしてほしい。そのためには、安定利用できる再エネを一つでも増やすことが必要である。新価格の設定で多様なエネルギー開発を国を挙げて育成すべきだ。