e差別解消への第一歩に

  • 2013.12.09
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月7日(土)付



障害者権利条約の承認
関係者の声反映した指針作りを



障がい者に対する差別をなくし、社会参加を促す国連障害者権利条約が国会で承認された。日本は、ようやく差別のない「共生社会」の実現へ一歩を踏み出す。批准をゴールではなく、スタートにしたい。

同条約は締約国に対し、障がい者が健常者と同等の権利を得られるよう立法措置を講じることを義務付け、誰にも教育や健康、就職、結婚などの権利が保障されるよう求めている。2006年の国連総会において全会一致で採択され、現在137カ国と欧州連合(EU)が批准している。

日本は07年に条約に署名したが、批准に至っていなかった。公明党は形だけの拙速な条約批准ではなく、十分に国内法を整備し、実効性を確保した上での実施をめざしてきただけに感無量である。

批准に必要な国内法の整備の一つが、公明党の主導で成立した障害者差別解消法だ。障害者基本法で規定している障がいに基づく差別の禁止を具体化するもので、障がいを理由とした差別的取り扱いを禁止している。視覚障がい者に対する点字や聴覚障がい者への手話通訳など、必要な配慮や措置も求めている。

差別解消法の施行は16年4月である。法律の趣旨を徹底するために、政府は差別に該当する判断基準や具体的な事例を指針(ガイドライン)で明示する。指針の策定に当たっては、障がい者団体や障がい者施設の関係者、識者などの意見を十分に聞いて、しっかり反映させてもらいたい。

対象は、職場をはじめ、公共施設や交通機関などあらゆる分野に及ぶ。例えば、精神障がいがあれば、ラッシュ時に満員電車を利用せずに通勤できるように配慮することや、車いす利用者がいれば建物内の段差解消も必要だ。罰則の規定も含めて、国民に分かりやすく伝えてほしい。

日本が条約に署名してからの6年間で障がい者関連の法整備は、ある程度進んだ。今後は、実際に対策を推進する自治体の対応が重要になる。

厚生労働省の調査では、障がい者の福祉や権利を守る知識・経験を持つ職員がいる都道府県は55%、市区町村では28%にとどまっている。

この陣容で、障がい者が望む地域社会の構築が、どこまで実現するだろうか、心もとない。財政難で大幅な人員確保は難しいが、職員が専門知識を身に付けていくための研修の機会を増やしてほしい。

今回の国会承認を機に、条約の精神をどう対策に反映させていくか。社会全体で取り組んでいきたい。

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