eイタイイタイ病 全面解決の教訓生かせ

  • 2013.12.24
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月21日(土)付



被害者と企業の信頼構築が鍵に



富山県の神通川流域で発生したイタイイタイ病の被害者団体と原因企業の三井金属鉱業が17日、一時金の支払いなどの救済策について合意書を交わした。

イタイイタイ病は1968年、国内で初めて認定された公害病だ。鉱山の排水に含まれるカドミウムに汚染された水やコメなどを口にした人たちが重度の腎臓障害や骨軟化症を発症した。患者の多くが「痛い、痛い」と訴えることから名付けられた。

これまでの認定患者は196人に上る。しかし、イタイイタイ病の前段症状といわれる「カドミウム腎症」は国の認定基準で認められていない。カドミウム腎症を患う人々の救済が大きな課題として残されていた。

合意書では、一定の条件でカドミウム腎症を発症した人に1人当たり60万円の一時金を支払うことなどが盛り込まれた。一時金の支払い対象者は500人から1000人程度とみられている。

長年の被害者の苦悩は消えないが、全面解決への節目を迎えた意義は大きい。政党として初めてイタイイタイ病を国会で取り上げ、公害認定に導いた公明党としても歓迎したい。一人でも多くの被害者の救済を切に望む。

今回の合意が実現した背景には、被害者団体と三井金属鉱業が培った「緊張感ある信頼関係」が指摘されている。

三井金属鉱業は毎年、住民による施設の立ち入り調査を受け入れた。神通川の水質改善を進め、汚染された農地の復元事業も昨年に完了させた。被害者団体も、被害者の存命中の救済を求めて交渉を粘り強く重ねた。

双方の歩み寄りの努力が、問題解決への鍵となったことは特筆すべきだろう。

イタイイタイ病の被害者の高齢化は進み、風化を防ぐ対策は待ったなしだ。

昨年に開館した富山県立イタイイタイ病資料館では、患者家族などの語り部による、被害実態の語り継ぎが行われている。痛ましい経験を、永く後世に伝えていく取り組みを今後も続けてほしい。

四大公害病のうち、水俣病と新潟水俣病は、国の認定基準の見直しをめぐる訴訟が今も続いている。イタイイタイ病の全面解決の教訓を生かすことはできないだろうか。知恵を絞ってもらいたい。

中国など経済成長が著しい諸外国でも、カドミウム汚染などの環境悪化が深刻化している。公害問題は過去の出来事ではない。環境汚染の代償の大きさを、われわれは忘れてはならない。

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