e米の量的金融緩和縮小
- 2013.12.24
- 情勢/解説
公明新聞:2013年12月24日(火)付
本格的成長への転換点
日銀は「副作用」を軽微に抑えよ
米連邦準備制度理事会(FRB)が、量的金融緩和の縮小を決定した。
市場関係者が「縮小決定は来年」と予想していた中での驚きの発表だった。FRBの決断を促したのは、米国経済が予想以上に回復している点にある。
中央銀行が金融資産を買い入れ、市場に十分な資金を供給して景気を刺激するのが、量的金融緩和である。短期金利の低下を促し、企業が設備投資のための資金を借りやすくなるなどの効果がある。
2008年9月に米証券大手リーマン・ブラザーズが経営破綻。米国は1930年代の世界大恐慌以来の経済ショックに見舞われた。余波は世界に及び、日経平均株価は同年10月に一時6000円台まで大暴落した。
経済危機から5年が経過し、米国経済は自律的な成長軌道に復帰しつつある。住宅投資の活発化と個人消費の順調な回復が、成長を後押ししている。緩和縮小の目安としてきた失業率は7.0%と、08年11月以来の低水準だ。
米国経済の回復は、今年4月から「量的・質的金融緩和」を導入した日本にとっても重要な意味がある。歴史的実験と言われた米国の量的金融緩和は、当初は効果を疑う声が少なくなかったからだ。
日本銀行(日銀)は、先週20日の金融政策決定会合で、来年以降も国債の買い入れを軸に金融緩和を続ける方針を示した。金融緩和の効果目標とする消費者物価指数の上昇率は「年内に1%を若干上回る」(黒田総裁)と見られ、日本の金融政策も重要な時期を迎えている。
日本の14年度の成長率は、物価変動を除く実質で1.4%程度となる見通しだ。来年4月の消費増税で景気が一時的に冷え込む恐れもあるが、年度を通じて景気回復が続き5年連続のプラス成長となる。政労使会議では、賃上げに取り組むことを明記した合意文書がまとめられた。個人消費が盛り上がれば、経済成長は一段と力強さを増す。
ただ、米国の量的金融緩和縮小の道のりは、平たんではないだろう。長期金利が上昇し、瞬間的に米国内の個人消費が悪化する可能性がある。その結果、輸出が好調な日本をはじめ新興国全体がダメージを受けかねない。過度な円安進行による日本の輸入品価格の上昇も懸念される。
今後の「副作用」を軽微にするには、日銀の市場との対話を重視した金融政策が重要だ。日本がデフレ脱却を果たし、米国の経済回復に続くことを世界も期待している。