e新型インフルエンザ 行動計画の策定を急げ

  • 2013.12.25
  • 情勢/解説

公明新聞:2013年12月25日(水)付



被害を左右する自治体の実行力



インフルエンザの流行が懸念されるこの季節、改めて、深刻な被害をもたらす新型ウイルス発生への警戒を呼び掛けたい。

今年4月、新型インフルエンザ対策特別措置法が施行された。同法の施行は、今春、中国でH7N9型の鳥インフルエンザ感染者が相次ぎ死亡した事態を踏まえ、前倒しされたものだ。すでに、中国で同型による死亡者は47人に上り、今月に入ってからも新たな感染者の拡大が確認されている。中国では、うわさの流布などで必要以上に社会不安が高まらないよう当局が情報提供に努めているほか、地元政府が、生きた鳥を扱う市場や医療機関に専門チームを派遣し、対応を強化している。

また、タイプが異なるH10N8型の鳥インフルエンザに感染した73歳の中国人女性の死亡も、今月、確認されている。

世界的流行の兆しは見られず、過度に心配する段階だとはいえないが、インフルエンザウイルスは変異を繰り返す。怠りなく、備えを進めることが必要だ。

特措法では、国や自治体に行動計画の策定を義務付けた。計画では、新型ウイルスの発生段階ごとに、疫学調査や薬の拠出など、なすべき行動を具体的に定めることになる。しかし、24日の時点で、同法を踏まえた行動計画を策定しているのは29都道府県にとどまる。各自治体には、速やかな計画の策定を求めたい。

2009年の新型インフルエンザ流行時、都道府県知事らからは、外出自粛や学校、催し物の制限といった対策を市民に要請する根拠となる法律がないと懸念する声が上がった。

このため、特措法は、緊急事態下で、より効果的に対策を講じられるよう法的根拠を定め、都道府県の実行力を強化。通常の協力依頼のみでは医療提供体制の確保ができない場合、知事は医療関係者に要請や指示することができるとした。

さらには、病院が足りない場合などは、土地や建物を借用して臨時の医療施設を設置することもできる。同法では、同時に医療従事者への補償制度も規定したが、かなりの強制力をもたせる内容となっている。国や自治体には、権限に見合う義務を果たすことが、当然求められる。

多くの人命に関わる新型インフルエンザ対策について、特措法制定の動きは、東日本大震災後に一気に加速した。緊張感を緩めることなく、命を守る取り組みを強化していきたい。

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