e高まるNPOへの期待

  • 2014.01.14
  • 情勢/社会
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公明新聞:2014年1月13日(月)付



促進法の施行から15年
シーズ代表理事・松原明氏に聞く
資金調達の苦労は続く



具体的な成果の提示など団体も自助努力が必要



ボランティア活動や国際協力など市民団体による公益活動を支援するNPO法(特定非営利活動促進法)が施行され、昨年12月、15周年を迎えた。NPO活動の現状と課題について、「特定非営利活動法人シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」の松原明代表理事に話を聞いた。



―NPO法の施行15年をどう見るか。



松原 時代は変わったというのが実感だ。NPO法が施行される前は、偏見や誤解が多かった。ボランティア団体というのは反政府的な運動と捉える人もいた。「何をやっているのか分からない活動」とも言われた。

例えば、海外で援助活動をする場合、法人格を持っているのが世界の常識だった。しかし、それがないため、海外に行っても非合法の組織と見られてしまい、支援活動がまともにできないということもあった。事務所を借りようとしても、法人でないので貸してもらえないケースも多かった。

1998年12月、公明党などの推進もありNPO法が施行された。各団体がNPO法人として法的に位置付けられたことで、以前のサークル的な活動から、組織化された社会貢献活動に転換した。

この法律は日本のボランティア活動の在り方を根本的に変えた。NPOが社会から有益な活動だと認知され、一定の社会的な地位を占めるようになった。

昨年8月の内閣府の調査でも、NPOを信頼できるかとの問いに対して、6割以上の人が「信頼できる」か「どちらかと言えば信頼できる」と答えている。また、市民による自主的な取り組みを「大切だ」と9割の人が評価している。期待は大きい。

日本のNPOは現在、約4万8000で、コンビニエンスストアとほぼ同じ数になった。数の上では大きな存在だ。それだけに期待に応えることが、より求められる時代になってきている。



行政の手が回らない部分をサポート



―NPOに期待される役割は。



松原 一つは行政や企業が扱わないような分野だ。そうした所に光を当てていく役割がある。例えば、DV(配偶者などからの暴力)の問題はかつて、「夫婦げんかには口を出せない」という風潮があった。しかし、事態は深刻で、被害女性を守るNPOが活動を続けた。その結果、マスコミなどで取り上げられ、DVは大きな社会問題となり、今では政府が主導して対策に取り組むようになった。

二つは行政がカバーしきれない、より細かなサービスの提供だ。例えば、大災害が発生すれば自治体は混乱し、避難所のアレルギー対応などに手が回らない。東日本大震災では、アレルギーの子どもを支援するNPOが活躍した。

また、行政は2~3年で担当が変わるので、専門家にはなれない。専門性のあるNPOが行政の手の回らない部分をサポートしていくことも大切だ。生活保護の一歩手前と思われる人に声をかけ、支援活動をしているNPOもある。

―NPO活動の現状について。

松原 日本のNPOはまだ草創期であり、試行錯誤の時代だと思う。これまで解散した法人も約8000に上っている。ただ、NPOには、うまくいかなかったら再チャレンジすればいいという理念がある。新しい分野にどんどん挑戦してもらいたい。

行政と一体となって活動している団体も多いが、現在は企業と共同で行うのが主流になっている。企業側も利益追求だけではなく、社会貢献にも力を入れている。これは世界的な傾向でもある。

文化として根付くか正念場を迎える

―今後の課題は何か。

松原 一番大きいのは財政問題だ。NPOの7割以上は財政的に厳しい。政府はNPOへの寄付を促進するため、認定NPO法人制度を始めた。一定の要件を満たしているNPOを認定し、寄付の優遇税制を受けられる制度だ。しかし、欧米に比べると認定要件はまだ厳しい。今後も政府に改善を求めていきたい。

一方、NPOの自助努力も問われる。市民がNPOに参加したり寄付することによって、どのような成果が上がり、地域がどのくらい、よくなったのか。具体的な内容をきちんと提示できるようになるべきだ。

ボランティア活動で、「これだけ成果が上がった」「仲間ができた」といった喜びが広がればリピーターが増えてくる。逆にそうした期待に応えられないと寄付は集まらないし、ボランティアは減ってしまう。

地域振興で成功している例として、B級グルメがある。各地域が単独でやるのではなく、全国的なネットワークで行っている。NPO活動が成果を挙げる上でも参考になると思う。

今後の15年は、日本にNPOが文化として根付くかどうか、正念場を迎えることになるだろう。NPOがさらに発展、成長するため、全力で取り組みたい。

まつばら・あきら 1960年大阪府生まれ。神戸大学卒。広告会社勤務などを経て、94年に「シーズ・市民活動を支える制度をつくる会」を結成。NPO法の成立で主導的な役割を果たした。著書・共著に「NPOがわかるQ&A」(岩波ブックレット)など。

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