e育児不安の解消めざす

  • 2014.01.16
  • 生活/生活情報
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公明新聞:2014年1月16日(木)付



一時宿泊と短期滞在
健康管理や授乳指導など
助産所8カ所で



産後間もない母親と赤ちゃんをサポートする「産後ケア」の必要性が、近年高まっている。政府も2014年度予算案に盛り込んだ。そこで、先駆的に取り組んでいる横浜市の試みを追った。

横浜市「産後ケア」
利用者の声「今は子どもがかわいいと思える」

横浜市に住むAさん(31歳女性)は昨年9月、市内の病院で第1子を出産した。初めての子育てはうまくいかないことばかり。不安だらけの毎日に、思い詰めることも多かった。

そんな中、不安定になりやすい出産直後のお母さんたち向けの支援を横浜市が10月から始めることを新聞で知り、わらにもすがる思いで地元の区役所に問い合わせた。

妊娠期からの切れ目ない子育て支援の一環として、同市がスタートさせたのは、産後に焦点を当てた「産後母子ケアモデル事業」。妊産婦支援の経験が豊富な市内8カ所の助産所に委託し、健康管理や授乳指導はもちろん、育児全般について、さまざまなアドバイスを助産師らから受けられる制度。

利用方法は、ショートステイ(一時宿泊)とデイケア(短期滞在)。いずれも利用者の自己負担額は1割(市民税非課税世帯は無料)。ショートステイは1日当たり3000円(最長7日間)、デイケアなら同2000円(最長7日間、1日当たり最長8時間)となっている。

対象者は、市民のうち、生後4カ月未満の子どもがいて、家族らの援助を受けられず、市による支援が必要と認められる母子。

年間出生数が約3万人に上る同市では近年、孤立しがちな母親が育児疲れや不安などから「産後うつ」に陥ったり、子どもへの虐待、殺害事件に至ったこともある。

そこで市は、各区役所で母子健康手帳を交付する際などのやり取りや、妊婦健診を行う医療機関との連携の中から、こうしたハイリスク(危険性が高い)の家庭を見つけ、同事業へとつなげてきた。

昨年12月末までの3カ月間で、利用者は35人に上り、市の声掛けで申し込んだ人、前述のAさんのように自ら応募した人が、ほぼ半数ずつを占めた。

「育児の大変さは変わらないけど、今は自分の子どもがかわいいと思えるようになりました」と語るAさん。

一方、Aさんを受け入れた、みやした助産院(同市南区)の宮下美代子院長は、「出産後の女性は、ホルモンバランスが崩れ、感情の起伏も大きい。助産所ならではの家庭的な雰囲気の中で、ゆったりと過ごしてもらうことを心掛けています。育児という長い道のりを楽しく健やかに過ごしていく大事な基礎をつくるのが、出産後の時期です」と話す。

同市こども家庭課では、このモデル事業を来年度も継続し、成果を検証していく考えだ。さらに、産前から、産後で子どもが5カ月未満の家庭を対象にヘルパーを有料で派遣し家事や育児補助を行う「産前産後ケア事業」など、従来から実施している事業との連携を深め、育児不安の解消に力を入れていくとしている。



母子のニーズに合った事業を



立保健医療科学院 特命統括研究官 福島 富士子さん


それぞれの地域に合った産後ケアの在り方について、国立保健医療科学院の福島富士子・特命統括研究官(母子健康危機管理分野)に聞いた。

産後ケアは、児童虐待防止対策という側面のほか、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)、少子化対策、さらに経済成長戦略などと関連付けて論じられることもある。いずれにしても、妊娠・出産・産後という流れの中で、母親目線に立った支援が地域で必要という点は共通している。

今は、産科医不足などにより、出産後わずか数日で退院させられ、体力が十分回復しないまま、後は母子の自助努力に任されることになりがちだ。高齢出産が増えているが、里帰り出産をしても、自分の父母も高齢化していて十分な手助けを受けられない。中には、両親を介護しつつ、出産しなければならないこともある。また、仕事が忙しい夫は当てにできず、孤立化を深める母親が多い。

産後ケアは、(1)横浜市のようにハイリスク家庭に対象を限定して行うサポート型(2)希望者は誰でも利用できるサービス型―に大別できる。その上で、支援拠点を新設するか、委託事業として地域の社会資源を使って実施するか、あるいは、自宅への訪問支援の方が適しているのか。母子のニーズ(要望)にきちんと応える産後ケア事業を各地域で展開してほしい。

昨年8月、産前・産後ケアの普及に向け、一般社団法人「産前産後ケア推進協会」を立ち上げた。関心がある人は、ぜひ、連絡してほしい(同事務局 TEL 03-6821-3035)。

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