e福島再生へ産業拠点化

  • 2014.01.28
  • 情勢/テクノロジー
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公明新聞:2014年1月28日(火)付



米国視察
赤羽一嘉経産副大臣に聞く



政府の原子力災害対策本部は昨年9月、基本方針の中で、国が前面に立って汚染水問題に取り組むとし、汚染水対策現地調整会議を設置。同12月には、福島復興加速の新指針を決め、廃炉拠点の整備を通じた避難指示区域の将来像を検討するとした。これらを踏まえた「福島・国際研究産業都市構想」の具体化に向け、赤羽一嘉経済産業副大臣(公明党)は、12日から19日にかけて米国各地の研究施設などを視察。その成果や構想の展望について聞いた。



目的



廃炉体制の構築と地域雇用創出の参考事例を調査



―視察の目的は。

赤羽 東京電力福島第1原発事故によって甚大な被害に遭った浜通りの地域経済を再生させる策として打ち立てた「福島・国際研究産業都市構想」の参考事例を調査してきました。

同構想には二つの狙いがあります。一つ目は、福島第1原発の着実な廃炉体制の構築です。廃炉用ロボット技術をはじめとした、世界最高水準の研究開発拠点をつくります。

二つ目は、地域雇用の創出です。原発事故によって仕事を失った方々だけでなく、多くの若者が集まってくるような魅力ある都市づくりを進めます。

廃炉体制の構築に関しては、汚染水漏れによって1980年代後半から廃炉・除染作業を実施している核施設「ハンフォード・サイト」(ワシントン州)や、ロボット研究開発で世界最先端の技術を持つ「テキサスA&M大学」(テキサス州)などを訪問。地域雇用の創出に向けては、ハンフォード・サイトの周辺にありながらも新産業の集積によって発展を遂げているトリシティという都市圏を訪れました。



成果



日米共同研究で認識一致
福島に研究所開設も視野



―訪米の成果は。

赤羽 テキサスA&M大学の研究者とは、廃炉用ロボットについて「将来的には日米での共同研究をしたい」との認識で一致しました。同大の研究所を福島県へ設置することも視野に入れています。

同大は、さまざまな災害現場を模造し、そこで救助活動をするロボットの実証訓練を行っており、放射能汚染下での訓練にも意欲を持っていました。

トリシティでは、浜通り再生の一つの形が見えました。ハンフォード・サイトと隣接するトリシティは、除染開始時に約8万人だった人口が17万2000人まで増えています。

人口増加の要因として、廃炉の研究施設や関連企業を集積して雇用を創出したほか、地元大学が農家への技術提供を通じて、質の高いワインの醸造を応援する地域振興策などが挙げられます。

また、ユニークだと思ったのは、行政と議会のほかに市民の代表でつくる諮問委員会が「もっと除染をしっかりやれ」と要求できる住民参加の仕組みがあることです。



展望



浜通りの活性化に向けて議論重ね、6月めどに提言



―今後はどのように取り組むのか。

赤羽 訪米の成果を踏まえ、21日に福島・国際研究産業都市構想研究会の初会合を開きました。東京電力や省庁、学識者に加えて、福島県副知事、浜通りにある自治体の首長、地方町村会長など地域を代表する方々に参加してもらっています。

東日本大震災と原発事故からもうすぐ3年。浜通りの13市町村で営業していた工場や商店のうち、地元で事業再開ができたのはわずか15%です。また、避難者の多くは帰還しない理由を「仕事がないから」としています。

研究会では、研究拠点の構築のほかに災害対応ロボットの国際競技大会の開催や、原発事故を後世に伝えるための施設整備なども検討課題に挙がりました。

どうしたら浜通りが元気になるのかじっくりと議論を重ね、今年6月をめどに提言をまとめる予定です。

<福島・国際研究産業都市構想> 東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉郡などの浜通り地方に、廃炉関連産業をはじめとした新産業拠点をつくり、地域経済の再生をめざす計画。産官学の人材を呼び込むことで世界最先端の技術を集積させる一方、地元住民の雇用も創出し、活力あるコミュニティーの構築を進める。

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