e一般教書演説 国内外で「行動」を示せ
- 2014.01.31
- 情勢/解説
公明新聞:2014年1月31日(金)付
超大国の内向き志向を案じる
オバマ米大統領が掲げた「行動の年」は「正念場の年」でもある。今年の施政方針を示す一般教書演説は、11月の議会中間選挙を強く意識した内容だった。
米議会は上院を与党民主党が、下院は野党共和党が、それぞれ多数の議席を占める「ねじれ」状態にある。大統領の信任投票ともいえる中間選挙で、与党が上下両院で少数派に転落すれば政権運営はますます厳しさを増す。
政権のレームダック(死に体)化を阻止するには、内政重視の姿勢を打ち出さざるを得なかったのだろう。大統領は、議会採決を得られない場合には、大統領令を発令してでも政策を遂行する強い決意を表明した。具体例に挙げたのが、連邦政府の契約職員の最低賃金引き上げだ。共和党との対立軸を鮮明にするものだが、議会の混乱を一層深めないか心配だ。
最低賃金の改善は、中間所得層を底上げする狙いがある。消費の活発化は、景気回復の下支えに必要なだけに、周到に進めるべきだろう。
米国社会を陰で支える1000万人以上の不法移民が強く求める市民権について、取得への道を開く移民制度改革の前進を求めた。急増するヒスパニック系移民との政治的融和は、今後の米国社会の安定に直結する。政策の行方を注視したい。
注目の外交政策では、イランの核問題やシリア問題に触れただけで、物足りなかった。議会が要求する対イラン制裁強化法案には、拒否権を発動すると表明、外交による解決の重視を鮮明にした。
もう一つの焦点だったのが、アフガニスタンからの米軍撤退だ。仮に、これが「世界の警察官」の立場まで放棄するものなのかどうか。同国では、テロリストたちの活動が収まっておらず、米国の役割は欠かせない。政情不安が続く国でのテロリストの暗躍に、今後も目を光らせる必要があるだろう。
気掛かりだったのは「アジア太平洋地域を重視し、同盟国を支援する」と明言しつつも、緊迫する北朝鮮問題に対する具体的な言及がなかった点だ。「唯一の超大国」の内向き志向は、東アジアの平和と安定に影響を与えないだろうか。同盟国をどのように支援するのか、もっと踏み込んでほしかった。環太平洋連携協定(TPP)は、アジア太平洋地域との協力強化が国内雇用の創出を後押しすると前向きな姿勢だった。
オバマ氏の任期は残り3年。国内だけでなく、国外にも「行動」を示してほしい。