e再生医療 研究の国際競争はし烈

  • 2014.02.12
  • 情勢/経済

公明新聞:2014年2月12日(水)付



政府は人材の処遇など支援強化を



日本人研究者による世界的な発見が続く万能細胞。特許や創薬などをめぐる、し烈な国際競争に勝つための態勢づくりを全力で後押ししたい。

万能細胞は心臓や神経など、あらゆる組織に成長できる性質を持つので、これを用いた再生医療は難病克服の切り札として期待されている。

理化学研究所の小保方晴子さんが新しい万能細胞「STAP細胞」を作製し、世界中を驚かせた。STAP細胞は、山中伸弥・京都大学教授が開発したiPS細胞に続く快挙である。作製が簡単な上、潜在的な可能性もiPS細胞に比肩するといわれる。

新薬開発や高度医療への応用が見込まれる万能細胞の研究競争は、既に各国が総力を挙げており、日本の優位性がいつ覆えるか分からない。万が一、他国の企業に特許権を取得されると、多大な使用料がネックとなり日本の研究に支障が出る可能性さえある。

iPS細胞研究の国際競争に勝ち抜くため、米国では研究者に加えてIT(情報技術)分析や知的財産、経営の専門家ら多分野の人材で研究チームを構成。研究資金も一つの州だけで他国を上回る規模で投入し、あらゆる側面から基礎研究や実用化を進めやすい態勢を築いている。

米国と比較すると、日本の研究者が置かれている環境は、手厚いとは言い難い。山中教授は、自身が所長を務める京都大学iPS細胞研究所の教職員は9割が有期雇用だと、処遇の不安定さに警鐘を鳴らす。高度な能力を持つ人材が集まらなければ画期的な成果が期待できないからだ。

さらに、万能細胞をめぐっては、生命倫理や企業との契約の在り方、社会への情報発信など、研究者の業務から、やや離れた重要課題も山積。多忙をきわめ、必ずしも研究に専念できる状況にはない。

政府の支援態勢は着実に整備されつつある。昨年の臨時国会では、再生医療関連製品の早期承認を可能とする改正薬事法などが成立。来年度予算案にも約150億円を計上し、再生医療に用いる細胞を蓄える「iPS細胞ストック」の整備などを行う。公明党の訴えが実ったものだ。省庁の縦割りを排し、医療分野の研究開発の司令塔となる日本版NIH(国立衛生研究所)も創設する方針だ。

万能細胞の研究は、日本に一日の長がある。ただ、国際競争はし烈さを増しており、研究環境の整備を加速させなければ取り残されかねない。政府は現場のニーズを的確に捉え、支援を強化してもらいたい。

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