eアジアの軍拡 海でのせめぎ合い続く
- 2014.02.13
- 情勢/解説
公明新聞:2014年2月13日(木)付
防衛交流など信頼強化の努力を
アジアでの軍拡競争が懸念されている。
英国の国際戦略研究所は、先週、世界各国の軍事力や地域情勢を分析した年次報告書「ミリタリー・バランス」を発表した。
報告書によると、米国が軍事費を減少させる中、2013年は中国など、アジア全体で3218億ドル(約32兆6千億円)と、10年の23%増加となった。
確かに、近年、中国の空母就航やインドでの建造、ベトナムなどの潜水艦増強など、アジアでの「海の軍拡」をめぐるニュースは少なくない。
背景には、「富国強軍」を掲げ、アジア太平洋での中国の勢力拡大と、周辺諸国・地域との領有権問題、米国のアジア回帰やリバランス(再均衡)政策がある。
中国のエネルギーは、中東やアフリカ諸国からの輸入原油に大きく依存しており、その80%以上はインド洋からマラッカ海峡を通過している。だが、中国経済の大動脈であるこのシーレーンは米軍のコントロール下にある。また、米国はアジア各地に、中国を囲い込むように多くの基地を有しており、中国の領海近くまで艦艇が航行している。
この"包囲網"の打開をめざして、中国は周辺国との摩擦を恐れず、「接近阻止・領域拒否」と呼ばれる戦略を取っている。
一方、米国は、イラクに続いて、アフガニスタンからの撤退を視野に入れ、アジア太平洋に軍事力を集中できる環境が整いつつある。アジア太平洋で各国との軍事的な連携を強化しており、シンガポールへ新型沿岸海域戦闘艦(LCS)の配備や、オーストラリア北部ダーウィンでの米海兵隊のローテーション展開、フィリピンへの巡視船供与など、中国に対抗する動きが目立つ。
フィリピン、ベトナムなど、南シナ海で中国と領有権をめぐる係争が生じている国々では、中国に配慮しつつも米国との協力、連携を強めている。
こうした海洋での各国入り乱れたせめぎ合いは、不測の事態を招きかねない。軍拡競争とともにナショナリズムが台頭し、冷静な判断が失われる恐れもある。
その一方で、海洋では自然災害や海難事故、海賊対策など、多国間で協力して取り組むべき課題が山積している。
かつての米ソ軍拡競争はソ連崩壊をもたらしたが、互いの動きに不信感を募らせ、国力を損なう愚を繰り返してはならない。各国とも防衛交流を進めるなど、信頼醸成への努力が求められる。