e国連の北朝鮮報告書
- 2014.02.20
- 情勢/解説
公明新聞:2014年2月20日(木)付
暴かれた人権弾圧行為
拉致解決へ国際圧力を強めよ
やはり、北朝鮮は組織ぐるみで外国人を拉致していた。 国連人権理事会の国際調査委員会は、北朝鮮の人権侵害行為が「人道に対する罪」に当たると非難する最終報告書を公表した。報告書は日本人ら外国人の拉致について、一部の特殊部隊の暴走行為ではなく、最高首脳レベルの命令に基づいた犯行と結論づけている。
拉致された被害者の所在地など全ての情報を家族と出身国に提供し、生存者は帰国させるべきと迫っている。
北朝鮮の国民に対する人権弾圧については、(1)治安機関などによる拷問、処刑の常態化(2)過去50年間に数十万人の政治犯が収容所で死亡(3)現在も政治犯ら8万~12万人が収容所に監禁―などを列挙し、「現代世界では比類ない非道」と糾弾している。
国連が特定の国の蛮行について、踏み込んだ内容を公表するのは異例である。拉致被害者家族や脱北者ら数多くの証言によって、北朝鮮の最高首脳ぐるみの人権侵害をつまびらかにした意義は大きい。
拉致問題などに対する世界的な関心は、必ずしも高くないが、報告書の公表を国際世論喚起への第一歩にしていきたい。
報告書は、国連安全保障理事会に対し、金正恩第1書記を含む広範な北朝鮮指導部の個人責任を追及するため、国際刑事裁判所(ICC)への付託や、国連特別法廷の設置を勧告した。国際社会が結束して、この勧告を現実化すべきである。
ただ、問題の解決は容易ではない。既に、北朝鮮の国際機関代表部は報告書の内容を「全面的に拒否する」と表明した。今後も、反発姿勢を改めないだろう。北朝鮮に影響力を持つ中国が18日、「ICCに付託しても、人権状況改善に役立たない」(外務省副報道局長)と、消極的な姿勢を見せたことも気がかりである。
日本は、関係国や国連と連携を深め、国際圧力を高める役割を積極的に果たさなければならない。当面は、来月に開催予定の国連人権理事会で、北朝鮮の人権状況の改善を求める決議が採択されるよう各国に働き掛けを強めるべきである。各国が足並みをそろえれば、北朝鮮には大きな圧力となる。
途絶えたままの北朝鮮との政府間協議も、再開を急ぎたい。直接対話が実現しても、交渉は難航するかもしれない。しかし、拉致被害者全員の即時帰国、真相究明、犯人引き渡しを迫り、解決への糸口を粘り強く見つけ出してもらいたい。