e日米関係 アジアの平和と安定の要
- 2014.03.07
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月7日(金)付
ズレ正し、環境変化への対応を
「東アジアの安全保障の礎石」といわれる日米関係だが、まったく不安がないという状況ではない。
米政府が昨年末の安倍首相の靖国神社参拝に「失望した」と表明したことは記憶に新しいが、首相側近が、これに対して「むしろ我々の方が失望した」と米国を批判し、撤回した。
日米関係をきしませるような事態を招いてはならないのは当然である。ただ、どんな良好な二国間関係といえども、安住すれば衰退や破綻を招くことは歴史が示すところだ。国際環境が変化する中で、課題や認識のズレを直視し、改革に努めなければならない。
日米の政治状況は大きく異なる。米オバマ政権は、上院では民主党が、下院では共和党が多数を占める「ねじれ」議会に苦しみ、内政基盤の弱体化が指摘されている。外交でも、シリア問題への対応などでロシアに主導権を奪われるなど、「強いアメリカ」のイメージは大きく損なわれた。大統領の口から「アメリカは世界の警察官ではない」との発言も飛び出した。
これに対して、昨年7月の参院選で衆参ねじれを解消し、高い支持率を維持し続ける安倍首相には、米共和党のような強力な対抗勢力は国内に存在しない。経済再生を軌道に乗せ、民主党政権で放置されてきた外交に全力を挙げている。
台頭する中国への対応についても、両国政府の姿勢は異なる。
米国は、冷戦時代の旧ソ連のように中国を敵視しているわけではない。オバマ米大統領夫人の訪中計画が発表されるなど、文化、教育交流や経済の相互依存は進んでいる。米国経済にとって、中国は魅力ある巨大な市場であり、決定的な対立を避けようとするのは当然である。
中国の太平洋への進出をにらんで、米国は東南アジア諸国連合(ASEAN)やオーストラリア、インドなどとの連携を強め、2020年までに米海軍の艦船の6割相当を太平洋地域に配備する計画も打ち出した。これらは、中国の軍事力とのバランスを重視した対応である。
一方、わが国は、沖縄県の尖閣諸島周辺への中国の海洋監視船などの領海侵入によって、「戦略的互恵関係」をうたった中国との関係は冷え込んだままである。
来月にはオバマ大統領が訪日する。両国首脳は、世界における日米関係の重要性を再確認し、アジア太平洋地域の平和と繁栄をめざすメッセージを発信してもらいたい。