e病院船の実証訓練

  • 2014.03.10
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年3月8日(土)付



民間船を活用できないか
幅広い視点からの検証作業を



災害時の洋上医療拠点として期待される病院船(災害時多目的船)の検証事業が来年度、東京湾内で実施される。政府が6日の参院予算委員会で、公明党の長沢広明氏の質問に対して明らかにした。

今年度も同事業は行われたが、来年度は民間船舶に医療機器を載せて、負傷者の応急処置や慢性疾患患者の受け入れなど船内での医療行為の実証訓練を行う方針だ。

海に囲まれた日本では、首都直下地震や南海トラフ巨大地震に備え、海上からの医療支援の必要性が高まっている。検証を重ねて病院船の早期導入を実現してほしい。

病院船は、米国や中国、ロシア、スペインなどの諸外国で運用され、実績を上げている。だが、専用の病院船を新規に建造すると、1隻あたり最大350億円の費用がかかり、年間の維持・運用費は25億円になると試算されている。財源の捻出は容易ではない。そこで、政府は当面、既存船舶を活用した実証訓練を行い、課題を検証していく。

今年度の実証訓練は、南海トラフ巨大地震を想定し、自衛艦にコンテナ式の医療室を積み込んで行われた。公明党が提案した医療コンテナの活用で、既存船舶が病院船に代わり得ることが証明できたのが成果の一つである。

実証訓練を行ったことで、さまざまな課題も浮き彫りになってきた。

例えば、民間船舶を活用する場合、(1)旅客スペースを患者収容場所に転用できる可能性(2)ヘリ甲板を有する船舶が少なく、着岸しないと活用が困難(3)患者搬送用のエレベーターがない船舶が多い(4)日頃航海していない海域を運航する際に準備が必要――などがある。来年度の事業は、こうした課題も検証してほしい。

このほか、陸上の医療機関との役割分担も踏まえ、船内で優先して治療すべき症例は何か、船舶が持つ大量輸送機能は活用できないかなど幅広い視点で病院船の在り方を検討してもらいたい。

病院船を効果的に活用するには、救命・救助活動を担う関係機関との連携や情報伝達手段の明確化が重要だ。自衛隊や海上保安庁、消防庁などがヘリコプターを保有しているが、災害時には一定の運用方法やルールを考えなければならない。特に、首都直下地震などの広域災害では、周辺自治体や関係機関との連携の在り方が問われる。

ハード面だけでなく、こうしたソフト面での検証作業も重要だ。来年度の事業では、両面からの検討を忘れないでほしい。

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