e大震災3年 「忘れない」が最高の支援
- 2014.03.11
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月11日(火)付
癒えぬ喪失感 "心の復興"へ官民学一体で
宮城県南三陸町の防災対策庁舎で、住民に避難を叫び続け、津波に呑み込まれた町職員の妻、三浦ひろみさん。赤さびた鉄骨の前に佇み、きょうも行方不明の夫に話し掛けるのだろう。「おとうさん、また来るね」と―。
東日本大震災から3年。1万5884人が亡くなり、2633人の行方が今も分からない。命を奪われた人たちへ祈りを捧げ、その遺族や被災者の"心の痛み"に思いを馳せる一日としたい。
今なお、復興半ばにある被災地に、私たちができることは何だろうか。ボランティアに出掛けたり、被災地の産品を購入したり、さまざまな支援の形がある。だが、職場で、地域で、家庭で"あの日"を語り合い、記憶の風化に抗い続けること、これが被災地への最大のエールであろう。
「『忘れない』ことが最高の支援」。宮城県気仙沼市で語り部の活動を続ける被災女性の言葉が思い返される。
被災者の多くは今も癒やし難い喪失感の中にある。長期の避難生活によるストレスで心身の不調を引き起こしている人も少なくない。アルコール問題やドメスティックバイオレンス、児童虐待が増加傾向にあることも気掛かりだ。
福島県では、震災関連死が、1671人を数え、直接死1607人を超えた。この中には、将来への不安から自ら命を絶った人もいる。「心のケア」は最優先の課題である。
被災自治体ではこれまでも、保健師や生活支援相談員による仮設住宅での見守り活動が続けられてきた。孤立を防ぐための交流サロンも開かれている。生活や心の悩みに対応する「よりそいホットライン」などの電話相談もある。
これら今ある社会資源をフル活用するのは当然として、官民学一体となって支援の裾野の拡大にも努めたい。
それにも増して急ぐべきは、子どもの「心の問題」である。被害が大きかった地域では、不登校が増加。厚生労働省の研究班によると、被災3県の幼児の3割が不安やうつなどの問題を抱えていることが判明した。
子どもの「心の傷」は、適切にケアしなければ成長に影響があるといわれている。トラウマ(重度の心的外傷)を受け、心的外傷後ストレス障害(PTSD)となった子どもが、精神科医や臨床心理士など精神保健の専門家による治療が受けられる体制の強化や、多様な「心のケア」のメニューの提示が求められよう。
"心の復興"へ、社会の総力を尽くして取り組みたい。