e小規模企業基本法案 事業の継続力アップを支援
- 2014.03.14
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月14日(金)付
競争力強化につながる制度設計を
政府が小規模企業の支援に焦点を当てた「小規模企業振興基本法案」を閣議決定した。小規模企業のための初の基本法として注目される。
振興基本法案は、事業の継続力を高めることを小規模企業政策の基本原則とした点に意義がある。技術力や営業力がありながら人材確保や資金繰りに苦しみ、次につながる事業拡張に踏み切れない小規模企業が少なくないからだ。
小規模企業を取り巻く厳しい環境は、地方活性化に重要な役割を果たす介護事業や農業といった「地域密着型ビジネス」への経営者の参入意欲を低下させる原因でもある。中企業を含む日本の開業率は1割にも満たない。
この実情に配慮し、振興基本法案は多様な需要に応じた商品やサービスの販路拡大、新事業展開の後押しを基本的施策に置いた。小規模企業の関連政策を国が体系的に進めるために5年間の基本計画を策定し、国と地方自治体、専門機関における連携強化で支援体制の充実にも努める。
小規模企業は「従業員数が20人(商業やサービス業は5人)以下の事業者」と定義されるように経営規模は小さいが、全国に約400万ある中小企業のうち9割を占める日本経済の支柱だ。
貴重な雇用の受け皿でもある小規模企業は、誰もが実感できる景気回復を全国へと押し広げるけん引役でもある。政府は昨年6月に策定した成長戦略(日本再興戦略)で、2020年までに中小企業の輸出額を10年比で2倍にする目標を掲げており、小規模企業の振興に力を入れる。
だが、国内事業が中心にならざるを得ない小規模企業は、人口減少による市場の縮小、海外との競争激化など大きな構造変化に揺さぶられている。歴史的な難局を乗り越え、成長戦略の目標を達成するには総合的な経営振興策の実行が欠かせない。
基本法案を軸にした実効性のより高い制度設計が次の課題である。
従来の経営振興策は小規模企業をいわば弱小と捉え、政策目的を大企業と中小企業の格差是正に置いてきた。しかし、インターネットを活用した情報通信技術で企業の環境格差は急速に縮まってきた。むしろ、変化の激しい経済状況の中で、迅速な経営判断ができる小規模企業の機動力が評価され始めている。
日本の1月の経常赤字が過去最悪を記録、企業の競争力強化は急務だ。小規模企業の良さを存分に引き出し、新需要の開拓に挑戦できるよう政策による後押しを求めたい。