e原発風評被害 正確な情報の共有がカギ
- 2014.03.19
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月19日(水)付
消費者の理解促進へ 発信強化の態勢づくりを
東京電力福島第1原発事故による風評被害が依然、福島県の農林水産業や観光業に重くのしかかっている。
農林水産省によると、津波被害を受けた東北3県の農家や農業法人の営農再開率は、岩手が54%、宮城が65%にまでこぎつけたが、福島は23%にとどまる。再開できない理由の9割は「原発事故の影響」、つまりは「風評被害」だ。コメや野菜の市場価格の低迷も続いている。
福島県商工連合会が昨年12月、首都圏の消費者を対象に実施した調査でも、福島県産食品を「買わない」と答えた人が3割を超えた。消費者庁が11日に公表した風評被害調査結果でも、同県産食品の購入を「ためらう」人は15.3%に上っている。
風評被害の解決に特効薬はない。「安全と安心は違う。安全と言われても不安は消せない」。こんな漠とした、不明瞭な消費者心理が寄り集まって膨らんだのが風評だからだ。あらゆる手段を駆使し、正確な情報を粘り強く発信し続け、消費者の理解と信頼を勝ち取っていく以外にない。
重要なのは、そのための態勢が万全かどうか。国や関係機関はこれまでの取り組みをあらためて点検し、より正確に、より効果的に、より迅速に情報発信できる仕組みづくりに知恵を絞る必要がある。
風評被害は、福島以外にも東北各県や茨城県、栃木県などにも及ぶ。だが、コメの全量全袋調査を自主的に行っている福島をはじめ、どの県も放射性物質の検査を厳格に行い、安全管理は徹底している。
というより、そもそも基準値を超える農作物はほとんど姿を消したのが現状だ。
2013年度産の野菜や果物で基準値を超えた作物はゼロだったし、コメも1091万2700点中、28点のみ。原発20キロ圏にかかる南相馬市内の、ほんの一部のものだけだった。
こうした"地元"の懸命の努力を支えようと、民間の団体や友好関係にある自治体の支援も活発だ。
消費者に、より良質で豊富な判断材料を提供しようと、NPO法人「CRMS市民放射能測定所福島」は、基準値よりも低い濃度まで測定し、公開し続けている。東京都の「被災地応援ツアー」や、首都圏各地で相次いでいるアンテナショップの開店も心強い。
こうした動きを線で結び、面へと広げ、発信態勢を強化できれば、風評は着実に収まっていくのではないか。
官民挙げての態勢づくりへ、国の強いリーダーシップを期待したい。