e雨水利用推進法案 「流す」から「ためる」に転換
- 2014.03.25
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月25日(火)付
都市型洪水の抑止へ成立急げ
雨水を資源と捉えて適正な循環を促す雨水利用推進法案が20日、参院を通過した。
同法案は、公明党案に与野党が賛同し、委員長提案で提出されたものである。昨年の通常国会では衆院を通過したものの、審議未了のまま廃案となった。今国会で必ず成立させてほしい。
雨水を活用すれば、水資源の有効利用につながるだけでなく、洪水の抑止や渇水時の水確保、水道料金の節約など多くの効果が期待できる。すでに一部の自治体が着手しているが、十分な効果を発揮するには、国を挙げた取り組みが必要だ。
法案では雨水利用を推進するため、国などの責務を明記している。国や独立行政法人が建築物を整備する場合、雨水利用施設の設置について取り組むこととし、自治体には目標設定の努力義務を課している。
多くの自治体では現在、雨水貯留槽などの設置に助成金制度を設けている。取り組みを加速させるため、自治体に対して不要となった浄化槽の転用を含めた助成の実施を促すとともに、国が財政上の援助をすることとしている。
また、国際規格化への展開を視野に入れ、国が調査研究の推進と成果の普及、技術者・研究者の育成に努めることなども盛り込んでいる。
法案づくりの背景には、都市化の進行で近年、頻発している集中豪雨への対応もある。都市が集中豪雨に襲われると、下水道の処理能力の限界を超え、洪水が発生しやすくなる。雨水をタンクにためれば、一挙に下水道に流れ込むのを防ぎ、洪水の抑止が期待できる。
例えば、東京都墨田区では、公共施設や民間施設などへの雨水タンク設置に取り組んでいる。同区にある両国国技館の場合、屋根に降った雨を約1000トンの地下タンクにためて都市型洪水を防ぐ。興行時には、ためた水を館内の水洗トイレや冷房用冷却水に活用している。
さらに、東京スカイツリー一帯には都内最大の2635トンの雨水タンクが設置され、地域の洪水防止に貢献するとともに、トイレの洗浄水や太陽電池の冷却水などに利用されている。
災害時には水道施設の損壊などで水が使えなくなる恐れもある。雨水をためておけば、初期消火やトイレの流し水などに役立つ。
雨水は流せば洪水となるが、ためれば有効な資源となる。雨水を「流す」から「ためる」という発想に変え、利用を進めていくべきである。