e日中韓の越境大気汚染 日本の技術・経験が生きる
- 2014.03.26
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月26日(水)付
観測や研究分野の協力を探れ
大気汚染対策を話し合う日本、中国、韓国の3カ国の政策対話が先週、北京市で初めて開かれた。
政策対話には、各国の環境行政の担当者らが参加し、汚染対策の効果の評価方法や自動車の排ガス対策などについて、情報を共有することで一致した。政策対話の継続的な開催にも合意した。
大気汚染物質の発生源は、日韓両国の国内にもあるが、最も深刻なのが中国だ。中国からの大気汚染物質が国境を越えて日本や韓国に飛来し、酸性雨や光化学スモッグが発生すると指摘されている。
越境汚染に、3カ国が連携して対策を進めることは有意義だ。併せて、環境分野での協力を深めることで、政治的に冷え込んでいる日本と中韓両国の関係改善にも生かしてもらいたい。
日中韓の大気汚染問題では、特に微小粒子状物質「PM2.5」の対策を急がなければならない。
PM2.5は、直径2.5マイクロメートル以下の物質の総称で、硝酸塩や硫酸塩、すすのような炭素成分などからなる。吸い込むと肺の奥深くまで入り、ぜんそくや気管支炎、肺がんを引き起こす恐れがある。
著しい経済成長を遂げる中国では、石炭やガソリンの使用量が急増している。工場のばい煙や車の排ガスに含まれるすすが増え、PM2.5の濃度が高まりやすい。全国人民代表大会でも、この問題が重要テーマとなった。
日本や韓国への影響も無視できない。
韓国では、PM2.5の濃度が高まり、飛行機が欠航する事態などが発生している。日本でも先月、各地で濃度が一時的に上昇し、10府県で外出を控えるよう行政が注意を呼び掛けた。
発生過程やその原因などについて解明すべき点は多い。中韓両国と協力し、観測や対策などの研究を推進していく必要がある。
日本と中国の自治体レベルでは、長年にわたって環境分野で協力の積み重ねがあり、そのノウハウを生かすことが国際連携を進める上で参考になる。
例えば、北九州市は、中国・大連市の排ガス対策などの計画づくりに情報提供も含めて協力し、大連市の大気汚染を大きく改善させた実績がある。川崎市と中国・瀋陽市などでも環境分野での協力が進められている。
国民の健康を守るのは、政治の重要な役割である。深刻な公害問題を克服してきた日本の経験や環境技術を積極的に役立てていきたい。