e原発汚染前の地下水 海放出に万全の対策を
- 2014.03.27
- 情勢/解説
公明新聞:2014年3月27日(木)付
国、東電は県漁連の決断に応えよ
東京電力福島第1原発で、原子炉建屋に流れ込み汚染される前の地下水を海へ放出する「地下水バイパス」計画が、動き出す見通しとなった。政府と東電は、安全性への懸念を抱く漁業者・水産業者の願いを裏切らないために対策に万全を期してもらいたい。
福島原発では、1日400トンのペースで汚染水が増えており、1年後には貯蔵タンクの容量を超えるといわれている。このため、福島県漁業協同組合連合会(県漁連)は25日、海洋汚染を防ぐ対策として「苦渋の決断」の末に計画を容認した。
2012年6月、地元の漁業者らは、第1原発北部で魚種を絞って試験操業を開始した。しかし、汚染水の漏えいなどで中止に追い込まれた経緯がある。漁業者らの東電に対する不信感は、容易に解消できるわけではない。今回のバイパス計画の実施にあたっては、漁業再生の足かせとなるような事態はあってはならない。
計画の容認にあたり、県漁連は、放出前の放射能検査や風評被害対策の強化などを求める要望書を政府と東電に提出した。検査基準の厳守や、安全性に対する第三者機関のチェック、風評被害が出た場合の補償などを訴えている。当然の要請だ。政府と東電は、誠意を持って回答すべきである。
さらに、東電は地元自治体のほか近隣の県漁連や消費者にも丁寧に説明していくべきだ。特に、消費者の理解を得る作業は漁業関係者にとって死活問題となる。例えば、放出する地下水の検査結果を分かりやすく発信するなど、工夫した取り組みが求められる。
今後、政府と東電は地下水の放出量など詳細を詰め、放出の開始時期を探っていく。慎重に協議を重ね、着実に計画を進めてほしい。
ただ、汚染水対策全体から見れば、バイパス計画は、あくまで緊急対策の位置付けにある。昨年12月に政府の汚染水処理対策委員会がまとめた報告書によると、地下水放出による汚染水の抑制効果は、1日20~120トン程度と試算されている。一定の効果が期待できるかもしれないが、十分なものとは言い難いのも事実だ。
原子炉建屋周辺の土壌を凍らせて地下水の流入を防ぐ凍土遮水壁の設置など、抜本対策を早急に進めなければならない。
県漁連は、計画の容認にあたり「廃炉の一助になるよう責任ある対応をした」と語っている。政府と東電は、この決断に対して、真摯な行動で応えるべきだ。