eスマホの通信料 過剰な"返金競争"見直せ
- 2014.04.02
- 情勢/解説
公明新聞:2014年4月2日(水)付
割安な料金選べる環境づくりを
スマートフォン(スマホ=多機能携帯電話)の通信料の引き下げに向けた論議が、総務省の有識者検討会で本格化している。検討会は、今月から通信各社や関係団体からヒアリングを行い、11月をめどに具体策をまとめる予定だ。
スマホは、"小型のパソコン"ともいわれ、映像や音楽、電子書籍といった豊富なアプリを使えるのが大きな魅力だ。
従来型の携帯電話と比べ通信料が高めに設定されているものの、近年、急速に普及が進み、個人所有率が50%を超えるとの調査もある。
ただし、日本のスマホの利用料金は諸外国と比較して割高と指摘されている。総務省の調査によれば、月額の通信料(2012年末時点)を世界の主要7都市で比較した場合、ドイツ(9085円)、米国(8698円)に次いで日本(7564円)が高かった。
原因の一つに、通信会社が新規顧客を獲得するため、他の通信会社から乗り換えた利用客へ支払うキャッシュバック(返金)の高額化が挙げられている。キャッシュバックの原資は、携帯電話を継続的に利用する人の通信料で実質的に賄うため、通信料が高止まりしてしまう構図だ。
新規顧客へのサービス競争そのものは、利便性の向上などにつながり、歓迎すべきことだ。
だが、何万円もの高額なキャッシュバックを目当てに、短期間で通信会社の乗り換えを繰り返す利用者も少なくないという。その負担のしわ寄せを継続利用者がかぶる仕組みに、不公平感や不満の声が上がるのは当然だ。
検討会では、行き過ぎた"返金競争"の是正を求める意見も出されている。何らかの抑制策を取ることができないのだろうか。活発な議論を期待したい。
利用者にとって、大手通信会社3社以外の選択肢が限られていることも、通信料が高くなる理由の一つだ。
大手通信会社の回線を借りてスマホ向けの通信サービスを提供する「仮想移動体通信事業者」(MVNO)は、割安な料金を設定できる。MVNOの参入を促し、利用者が多様な料金メニューを選択できる環境を整えていく必要がある。
総務省の家計調査によれば、世帯消費支出が全体的に減少する中で、携帯電話などの通信料は過去7年間で1万円以上増加し、家計の負担は重くなっている。
検討会は、利用者の立場に立った競争政策の議論を深めてもらいたい。