e避難指示解除 都路からの報告<上>
- 2014.04.03
- 情勢/社会
公明新聞:2014年4月3日(木)付
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3年ぶりの故郷 「やっと戻ってきた」
抜けるような青空が広がっていた。暖かな陽光が木々をまぶしく照らしていた―。
東京電力福島第1原発事故に伴い、3年の長きにわたり避難指示が出ていた福島県田村市の都路地区。その"縛り"が1日、ようやく解除され、住民たちはそれぞれの思いで"遅すぎた故郷の春"を噛みしめた。
「私たち、仲良しなの!」。色とりどりの遊具に囲まれた部屋に子どもたちの屈託ない笑顔が広がり、歓声がこだまする。この日、3年ぶりに元の地でオープンした、幼稚園と保育所、学童保育の機能を併せ持つ「都路子ども園」。無邪気に遊び回る子どもたちを優しい表情で見守りながら、渡辺かつよ園長は「やっと戻ってこれました」とにっこり。「不安もあるけど、地域に明るさを与えられるように頑張っていく」と"前進"を誓う。
警戒区域(原発20キロ圏)だった都路地区は、2012年4月に日中の立ち入りが可能な避難指示解除準備区域に再編され、昨年8月からは帰還準備のための特別宿泊が可能になった。
ただ、地区の人口117世帯357人のうち宿泊を申請していたのは27世帯90人(2月末時点)のみ。背景には、放射線への健康不安や生活の不便さなどがあり、即時に帰還するのは一部にとどまる見通しだ。
それでも、解除を受け、外部からの人の出入りが増加することを想定して、警察や地元の住民ボランティアらは防犯パトロールを強化。この日にはさっそく出動式を行った後、地区内を回った。
「無人地帯だった町にようやく人が戻ってきた。地域の安全・安心のために治安維持に努めたい」。都路すずらん隊の渡辺辰雄隊長は、こう意気込む。
20キロ圏内の自宅で畳店を営む根内京二さん(55)は、生まれ故郷で穏やかな暮らしを取り戻そうと、仕事に精を出す。福島市で暮らす3人の孫が春休みを利用して遊びに来ており、作業場にはにぎやかな声が響いた。
冨塚宥暻市長は「『都路の復興なくして田村の復興なし』。この一歩を大切に、故郷を取り戻す」と力を込めた。
福島県内の11市町村で初めて、帰郷が実現した田村市都路地区を歩き、現状と課題を報告する。