e避難指示解除 都路からの報告<中>

  • 2014.04.04
  • 情勢/社会
[画像]メインイメージ

公明新聞:2014年4月4日(金)付



拭えぬ不安
放射能の恐怖なお 生活再建どう支える



扉が固く閉ざされ、補修も手付かずの家々。日が暮れても、明かりが灯らない集落......。
避難指示が解除されたとはいえ、わが家への帰還をためらい、苦渋の表情を浮かべる住民は少なくない。根底にあるのは、今なお拭い切れない放射能への不安だ。

「子どもへの放射線の影響が気がかり」「原発がまた爆発したらどうするのか」。田村市中心部の仮設住宅で避難生活を続ける人たちはこう語り、当面の間、自宅には戻らないと決めている。

中でも、若い世代にその傾向が顕著だ。都路地区内の校舎に戻り、間もなく授業を再開する小中学校が3校ある。ただ、約6割の家庭が避難先から1時間近い道のりをスクールバスなどで通学させる。

国の直轄除染は終わった。しかし、局地的に線量が高い地点が残り、再除染を求める意見も根強くある。道路脇にうずたかく積まれた汚染土の仮置き場も、その不気味な姿を消す見通しは立っていない。除染廃棄物を運び込む中間貯蔵施設の建設も進まぬままだ。

「仮置き場の期限は3年という約束だが、果たして守られるのか。時間がたつと袋が破れることも予想され、皆が心配している」。都路6区で行政区長を務める吉田勝男さんはこう漏らす。

生活再建への不安も残る。東京電力が支払う月10万円の精神的賠償は、1年後には打ち切られる。仮設住宅などの入居期限も来年3月まで。それだけに、区域解除を複雑な思いで受け止めた人は多い。市内の借り上げ住宅で暮らす伊藤幸子さん(64)もそんな一人だ。

20キロ圏内にある自宅は、長引く避難生活で雨漏りなどが発生。修復するには何百万円と掛かる見込み。1年以内に帰還すれば、90万円の賠償が追加されるが、住居を直すのにはとても足りない。「帰れない私たちは、一体どこに行けばいいの」。苦悶の日々が続く。

市や国は、住民の不便な暮らしを少しでも解消できるよう、今月6日に仮設の複合商店を開所させる。デマンド交通タクシーの運行も始めたほか、屋内遊び場もオープンさせた。だが、都路に戻る決断ができていない人たちの不安を消す"決定打"には到底、なり得ない。

4月1日付で都路行政局長に就任した赤石沢晶さんは、都路の出身。奇しくも解除と同じ日に、3年ぶりの故郷で新出発を切った。住民が抱える苦悩を念頭に、「行政への要望や意見に耳を傾け、とにかく寄り添っていく」と前を見据えていた。

月別アーカイブ

iこのページの先頭へ