e震災関連自殺 「心のケア」官民学一体で

  • 2014.04.08
  • 情勢/解説

公明新聞:2014年4月8日(火)付



懸念される増加傾向 基金継続など対策の強化を



震災から3年目以降、阪神・淡路大震災に襲われた神戸市では、自殺者が急増したことが知られている。東日本大震災の被災地でも今、震災や東京電力福島第1原発事故を原因とした自殺が増加傾向にあり、対策強化が急がれる。

内閣府によると、2013年における震災関連の自殺者数は38人で、前年の24人から増えた。原因・動機は、健康問題が最多で、経済・生活、勤務問題、家庭問題と続く。

これら、複数の危機要因が連鎖し、人は自殺に追い込まれるという。被災者への健康や生活再建への支援とともに、今こそ、「心のケア」に官民学が一体となって喫緊の課題として取り組むべきだ。

心のケアは(1)コミュニティーの維持・再生によるもの(2)保健師、臨床心理士、精神保健福祉士といった専門家や研修を受けた人による見守り、傾聴など(3)医療機関での対応や予防―の3段階がある。

心のケアの活動は、各地でこれまでも草の根で続けられてきた。具体的には、住民の孤立を防ぐための見守り活動や交流サロンの運営、悩んでいる人に気付いて、話を聞いて必要な支援につなげる「ゲートキーパー」の育成、自死遺族をサポートする「わかちあいの会」の開催などである。

こうした活動は、市町村のほか、NPOや民間団体、大学が担っており、財源には国の「地域自殺対策緊急強化基金」が活用されている。

同基金は、自公連立政権時代の2009年度補正予算に、公明党のリードによって盛り込まれた。

この措置によって、地域での予防活動の経済基盤が担保され、翌10年から自殺者数が減り始めた。12年には15年ぶりに3万人を切り、4年連続で減少している要因の一つ、と指摘されている。

同基金は、被災地においても、仮設住宅の巡回や相談支援など被災者の心のケア対策に生かされている。県外からの震災避難者を対象に、医師らによる定期相談会を実施している秋田県の支援策に使われているのもこの基金だ。

ただ、同基金は14年度が期限。「待ったなし」の状況にある被災地や、他の自治体、民間団体からの要望も踏まえ、国は基金の継続を決断すべきだ。併せて、より長期的な視点から、この際、恒久的な財源の措置も検討すべきことを提案しておきたい。

長引く避難生活や生活環境の変化によるストレスなどから、心のケアはこれからが正念場。被災地の現状に合った対策を継続するためにも、さらなる国の支援を求めたい。

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