e三陸鉄道全線復旧 地域再生の夢乗せて走れ
- 2014.04.11
- 情勢/解説
公明新聞:2014年4月11日(金)付
つながった107キロ 一段の復興加速をめざして
地域再生の夢を乗せて、絶景の三陸の地を軽やかに力強く走り続けてほしい。被災地復興のシンボルとして―。
東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県の沿岸部を走る三陸鉄道(三鉄)の南リアス線(盛―釜石間、36.6キロ)と北リアス線(宮古―久慈間、71キロ)が全線運行を再開した。
待ちわびること3年余、総延長107.6キロの完全復活を沿線住民と祝福するとともに、三鉄職員ら関係者の復旧までの奮闘をたたえたい。お帰りなさい、三鉄。お疲れさまでした、鉄道マンたち。
駅舎や橋が流失し、レールも随所で変形、断裂するなど、三鉄は震災で壊滅的な被害を受けた。だが、発災5日後には早くも一部区間で、運賃無料で運転を再開。「地域の足」として住民を支え、被災地の希望となった。
この住民密着の姿勢が、予想を上回る早期の復旧を可能にしたことは間違いない。
「廃線」の声も飛び交う中、沿線住民は一貫して「再開」を支持し、無人の駅舎の清掃や観光ボランティアの活動などに汗を流した。この熱意に地元市町村も応え、線路をふさいでいた、がれきを自治体負担で撤去。海外からも「三鉄頑張れ」の声が相次ぎ、クウェートからは車両を購入するための資金支援もあった。
国も、三鉄が第三セクターであることに着目して、これまでになかった「自治体支援」というスキームで救済に当たった。「三鉄の希望作戦」と名付けられた自衛隊の活躍も話題になった。
この間、三鉄をモデルにしたNHKドラマ「あまちゃん」が大ヒットし、観光を大いに盛り立てたことは周知の通りだ。全国からの有形無形の支援なくして、三鉄の再出発はなかったろう。
郷愁を誘う「鉄道のある風景」が蘇ったことで、三鉄沿線はにわかに活気づいている。車窓に映る風景はまだまだ復興途上だが、あの日以来、久しく絶えていた笑顔が人々の間に戻ってきたようにも見える。この高揚感こそ、被災地が長く待ち望んでいたものではなかったか。大いに奮起し、三陸再生と復興加速のレールを駆け上ってほしい。
ただ、避けて通れない問題がある。南と北の両リアス線をつなぐJR山田線宮古―釜石間の復旧問題だ。JR東日本は、同区間を復旧した上で三鉄に運行を移管したい考えだが、条件面で折り合いがつかず、合意に至っていない。
鉄道はつながってこそ力になる。三鉄が全線再開した今、国と地元自治体とJRは議論を急ぐ必要がある。