e子ども読書の日 国語力を磨く大きな機会
- 2014.04.23
- 情勢/解説
公明新聞:2014年4月23日(水)付
良書から社会で必要な知恵学ぼう
きょう23日は、子ども読書の日。家庭や学校で子どもが良書に触れ、心豊かな人生を歩むための機会にしたい。
読書の魅力の一つは、想像力を大きくかき立ててくれることだ。イタリア商人、マルコ・ポーロによる『東方見聞録』は約700年前に編さんされたが、隆盛を極めたモンゴル帝国の様子を今に伝える。
情操教育に読書が役立つ理由は、ここにある。子どもたちに読書の魅力が伝わっていないとすれば、大人が読書を楽しむ余裕を失っているからではないか。だんらんの時間に、家族で読書に興じるのも良い。地域での「読み聞かせ運動」を一層支援するのも重要だ。
読書よりインターネットを楽しむ時間の方が長い子どもが増えた。ネットに慣れた子どもにとって、読書は単調な作業に感じるのかもしれない。ネット利用が低年齢化する中で、早い段階から読書に親しむことは重要だ。事実の裏付けがある新聞と異なり、ネット上の情報は玉石混交で、真偽が不確かなものも多い。急速に進む情報化社会を生きる現代の子どもたちにとって必須の情報を読み解く力は、読書によって養われる。
良書を読むことで身に付くのは、読解力だけではない。他人とのコミュニケーションに欠かせない質の高い表現力も養うことができる。中国・唐代の詩人の白楽天は、自分の作った詩を発表する前に草稿を一般の人々に読んで聞かせ、分からない言葉があるとちゅうちょなく簡単な言葉に置き換えた。
名著とは、読者が理解しやすい単語や文章構成を作家が選び抜き創作されているだけに、子どもの頃に読んだ内容でも長く心に残る。場面に応じて的確に操れる表現力の習得は、社会で円滑な人間関係を築く基礎だ。
社会で通用するような国語力を、どう訓練するべきか。本の多読や音読、気に入った表現を手で書き写すことも効果的だ。作家の谷崎潤一郎は、何百種もある酒の品評会で専門家の評価がぴたりと一致する事実を例に「感覚と言うものは、一定の訓練を経た後には、各人が同一の対象に対して同様に感じるように作られている」と記した(『文章読本』)。グローバルに活躍する著名人に、幼少期からの読書好きが多いのは、偶然ではない。
小中学校には平均で約1万冊の本がある。膨大な本に怯みそうになるが、根気よく読書を続ければ"人生の一冊"は現れる。新たな発見との出会いを楽しんでほしい。